●米国居住投資家に対する債務履行に伴う決済業務を禁止
●デフォルトは宣言されたとしても7月末頃となる
ロシアが7月末にも債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が拡大している。米国居住投資家に対するロシア政府の債務履行に伴う決済業務を米銀が5月25日から取り扱えなくなったためだ。ただ、ウクライナ侵攻以降、ロシアが外国金融市場で資金を新規調達することは事実上不可能になっており、世界経済への影響はほとんどないとみられている。
米財務省はロシアのウクライナ侵攻後、国内銀行に対し、ロシア国債に関連する決済の取り扱い継続を25日零時まで、時限的に許可した。今回、免許更新を見送ったことで、ロシアの債務履行手段を奪った形だ。
ロシアはこのような状況になることを予想したとみられ、25日期限の債務償還・利払いを20日に前倒しで履行した。次回の期限は今月23日だが、30日間の猶予期間があるため、デフォルトが宣言されたとしても7月末頃となる。ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所のジェラルド・ディピッポ上級研究員によれば、ロシアの国債発行額は約200億ドル相当で、その大半が米ドル建てだ。また、来月の利払い額は5億ドルに上るという。
専門家らは、ロシアがデフォルトに陥っても、現況が短期的に変化することはないとみる。西側諸国の制裁で新規調達が技術的に難しくなっているのに加え、投資家の多くがロシアを敬遠してすでに資金を引き揚げているためだ。ただ、経歴に「デフォルト」の文字が残ることで、戦争が終わった後もロシア国債に買い手がつかない状態が長期化すると予想される。
今回の決済取り扱い禁止は、西側諸国による幅広い対ロシア制裁措置の一つ。米政府は制裁の影響でロシア経済が今年15%縮小すると予測している。