ドイツ政府は23日、天然ガスの国内供給不足に対応するための警戒レベルを引き上げた。ロシア産の供給が大幅に減ったことを受けた措置で、警戒レベルをこれまでの「早期警戒」から「警戒」へと引き上げた。ロベルト・ハーベック経済・気候相は「ガスは今現在から品不足の財となる。価格は現在すでに高く、今後さらに上昇することを我々は覚悟しなければならない」と述べ、メーカーや消費者などすべての需要家に可能な限り消費量を減らすよう呼びかけた。
ドイツには欧州連合(EU)の「天然ガスの安定供給確保に関する規則」に基づく天然ガス供給の警戒システムがある。同システムは3段階からなり、第1段階の早期警戒はロシアが「非友好国」の企業に天然ガスのルーブル決済を義務付ける方針を打ち出したことを受け、3月末に発令された。
早期警戒はガス供給が大幅に悪化する可能性が高い場合に発令される。また、警戒は供給状況が大幅に悪化した場合に発令される。ただ、この段階では市場メカニズムを通して問題に対処することから、国家は介入しない。
警戒では対処しきれない場合は最高レベルの「緊急」段階へと引き上げられ、国がガス市場に介入。所轄官庁の連邦ネットワーク庁が配給を実施し、産業向けの供給量が制限されることになる。
ロシア国営天然ガス会社ガスプロムは今月中旬、パイプライン「ノルドストリーム1」を通した欧州向けのガス供給量を大幅に減らした。1日当たりの供給量を容量(1億6,700万立方メートル)の40%に当たる6,700万立方メートルに制限している。技術的な問題を削減の理由としているものの、対露制裁への報復の可能性が高く、ハーベック氏は「プーチン(大統領)の経済的な攻撃だ」と批判した。
ノルドストリーム1の供給量が現在の水準にとどまると、ドイツはガス需要が大幅に増える冬季に向けて進めている備蓄の目標を達成できなくなることから、警戒を発令した。
警戒が発令されると、ガス会社は調達価格の高騰分を都市エネルギー公社や大手メーカーなどの顧客に転嫁できるようになる。だが、政府は「価格調整メカニズム」と呼ばれるこのルールの導入を差し当たり見合わせる意向だ。ハーベック氏は、エネルギー供給の崩壊を回避するためには同メカニズムが一定の状況下で必要になるとしながらも、価格が一段と高騰するなど副作用が大きいと指摘。同メカニズムの代替策を作成していることを明らかにした。