独化学工業会(VCI)は6日、同国化学・製薬業界の2022年の生産高が前年比で1.5%減少するとの予測を発表した。化学品の販売量が減少しているうえ、状況改善の兆しも見えないことから、生産が減少に転じるとみている。好調な製薬を除くと生産高は4.0%落ち込む見通しだ。
VCIは昨年12月、22年の生産成長率が2.0%(製薬を除くと1.5%)になるとの予測を提示した。だが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて先行きを全く予想できなくなったことから、3月下旬に出荷価格、売上高を含むすべての予測を撤回。今回は生産についてのみ予測を提示した。クリスティアン・クルマン会長は「ドイツと欧州の今後数カ月の産業政策に多くのことがかかっている」と述べており、不適切な政策が取られれば業績予測のさらなる下方修正もあり得ることを示唆した。
22年上半期の業界生産高は前年同期を0.5%上回った。製薬がコロナ特需で8.5%増え、全体が強く押し上げられたためで、化学に限ると3.0%減少した。分野別でみると、ファイン・スペシャル化学品が9.0%減と特に大きく落ち込んだ。石油化学品・誘導体は2.5%減、無機基礎化学品と洗剤・ボディケア製品・化粧品は各0.5%減。ポリマーは3.0%増加した。化学業界では販売量の減少を受け、工場稼働率が平均80%へと落ち込んだ。
エネルギー・原材料コストの上昇を受け、化学・製薬業界の出荷価格は平均21.5%上昇した。このため売上高も22.0%増の1,300億ユーロと大幅に拡大。国内売上高は25.5%増の500億ユーロ、国外は同20.5%増の800億ユーロとなった。業界就労者数は横ばい(47万3,200人)を保っている。
■エネルギー・原料コストの転嫁は難しく
会員企業アンケートでは、原材料・エネルギー価格の上半期の上昇率(前年同期比)が平均約34%に達したことが分かった。50%を超えたとの回答も20%以上に上っている。
一方、コスト上昇分を「ほぼ全面的に顧客に転嫁できた」のは17%にとどまった。「大部分を転嫁できた」は28%、「ほぼ半分を転嫁できた」は20%、「転嫁できた部分は少ない」は11%、「ほとんど転嫁できなかった」は21%となっており、多くの企業が利益を圧迫されていることがうかがわれる。利益が減少したとの回答は70%に上った。
事業の最も大きな支障になっている事柄は「原材料価格の上昇」で、計89%が「大きな支障」ないし「とても大きな支障」と答えた。これに「エネルギーコストの上昇」が70%で続いた。「物流の問題」は51%、「原材料不足」は50%、「専門人材不足」は38%だった。「受注不足」は8%と少ない。