英政府が物価高対応の家計支援策発表、光熱費上限を2年間据え置き

英政府は8日、記録的な物価上昇に対する家計支援策を発表した。エネルギー価格の高騰に対応するため、10月1日から「エネルギー価格保証」と呼ばれる新制度を導入し、標準的な世帯が支払う電気・ガス料金を現状とほぼ同水準に抑える。政府は一連の対策にかかる費用を示していないが、英メディアは最大で総額1,500億ポンド(約25兆円)規模に達する可能性があると報じている。

トラス首相は議会下院で演説し、「物価高の根本的な原因に対処するため、政府は光熱費に関する保証を提供する。これはインフレ抑制と経済成長につながる対策だ。われわれは世界的なエネルギー危機に直面しており、コストのかからない選択肢はない」と強調した。

具体的には、エネルギー規制機関Ofgemが設定する電気・ガス料金の上限を10月から2年間、標準世帯のモデルケースで年間2,500ポンドに抑える。Ofgemは8月末、10月1日から標準世帯が1年間に支払う光熱費の上限を80%引き上げ、3,549ポンドとすると発表していたが、今回の措置により、上限が約1,000ポンド引き下げられる。また、ジョンソン前政権は5月、家計支援策として全世帯を対象に、10月~2023年3月の光熱費を400ポンド差し引くと発表していた。このため、今回の措置と合わせて10月以降の実質的な光熱費の上限は2,100ポンドとなり、現在の1,971ポンドとほぼ同水準に抑えられることになる。

政府は今回の対策でインフレ率を最大5%抑制できるとの見方を示している。ただ、コストについては天然ガスの卸売価格の変動が大きいため、現時点では対策にかかる費用を示していない。クワーテング財務相が月内にまとめる財政報告で明らかになる見通しだ。エコノミストらは、最大で1,500億ポンド規模の財政出動が必要になり、政府の借入金が1,000億ポンドを超える可能性があるとの見方を示している。

一方、企業に対する光熱費の負担軽減策は今回の対策に盛り込まれていないが、家計と同様の支援を提供すると表明している。期間は原則6カ月で、飲食や宿泊などサービス業は延長される可能性がある。近日中に詳細が発表される見通しだ。

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