英政府は21日、エネルギー価格高騰に対応するための企業向け支援策を発表した。10月から6カ月間にわたり、電力とガスの卸売価格に上限を設け、今冬の光熱費を想定される水準の半額以下に抑える。政府はすでに家計向けの支援策を発表しており、企業向けにも同等の支援策を用意すると表明していた。クワーテング財務相は23日、一連の光熱費抑制策のコストが10月以降の半年間で総額600億ポンド(約9兆5,000億円)規模に上ると明らかにした。
「光熱費救済スキーム」と名付けられた今回の措置は、企業のほか、慈善団体などの非営利組織、学校や病院などの公共施設に適用される。今冬の予想卸売価格は電力が1メガワット時(MWh)当たり490ポンド、ガスが170ポンドであるのに対し、電力は211ポンド、ガスは75ポンドを「支援卸売価格」に設定。卸売価格が支援価格を上回った場合は差額を補助する仕組みで、契約形態に応じて値下げ幅が決まる。卸売価格に連動して単価が変動する変動価格契約では、10月から6カ月間の予想される平均卸売価格(電力は405ポンド/MWh、ガスは115ポンド/MWh)と支援価格の差額を卸売価格から割り引く。
支援策の適用期間は10月1日~2023年3月31日。政府は3カ月以内にスキームの検証を行い、エネルギー価格高騰で最も深刻な打撃を受けている業種を特定して施策の効果を評価し、来年4月以降も支援を継続するか検討する。
政府は今月8日、家計向けの支援策として、10月1日から「エネルギー価格保証」と呼ばれる新制度を導入し、電気・ガス料金の上限を2年間、標準世帯のモデルケースで年間2,500ポンドに抑える方針を打ち出した。エネルギー規制機関Ofgemは8月末、10月1日から標準世帯が1年間に支払う光熱費の上限を80%引き上げ、3,549ポンドとすると発表していたが、ジョンソン前政権が表明した全世帯を対象に10月~来年3月の光熱費を一律400ポンド差し引く支援策と合わせて、10月以降の実質的な光熱費の上限は2,100ポンドに抑えられ、現在の1,971ポンドとほぼ同水準となる。