●「ロシアの軍事侵攻はEU拡大の重要性を浮き彫りに」=EU高官
●全加盟国の承認で正式に加盟候補国の地位が付与される
欧州委員会は12日、欧州連合(EU)拡大に関する年次報告書を公表し、ボスニア・ヘルツェゴビナを「加盟候補国」として認定するよう加盟国に勧告すると明らかにした。全加盟国が承認すれば正式に加盟候補国の地位が付与され、交渉開始に向けて大きく前進する。ただ、同国は司法改革や汚職対策、人権保護などの課題に取り組むよう求められており、加盟候補国に認定されても厳格な交渉開始条件が課される可能性がある。
ボスニア・ヘルツェゴビナは2016年2月にEUへの加盟を申請し、現在は「潜在的加盟候補国」と位置づけられている。EUに加盟するには法、自由、金融サービス、教育など35の政策分野でEU基準を満たす必要がある。欧州委は報告書で、EU加盟に向けて同国が取り組むべき14の優先課題のうち、一部には進展がみられるものの、「民主主義、国家機関の機能、法の支配、汚職・組織犯罪との闘い、報道の自由、移民管理」などで一段の取り組みが必要と指摘している。
EUのボレル外交安全保障上級代表は声明で「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はEU拡大の重要性を浮き彫りにし、新たな地政学的意義を持たせた」と強調。欧州委のバールヘイ委員(近隣政策・拡大担当)は「EUの拡大政策は、欧州大陸の平和と安定、安全を確保し、社会経済の成長を促すための戦略的投資だ。加盟候補国の地位付与の勧告はボスニア・ヘルツェゴビナの市民にとって歴史的な瞬間といえる。同国の指導者たちがこの機会を最大限に活かして優先課題への取り組みを強化し、加盟交渉の開始に向けて歩みを進めることを強く希望する」と述べた。
一方、欧州委は加盟候補国の西バルカン4カ国(アルバニア、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)とトルコ、さらに潜在的加盟国のコソボについて、いずれも法の支配や汚職対策、報道の自由など主要な課題への取り組みを強化する必要があると指摘。このうち歴史的にロシアとのつながりが深く、EU加盟を目指しながら欧州とロシアの間でバランスを取ることに腐心しているセルビアに対しては、EUの外交政策との整合性を図るよう促した。同国はロシアのウクライナ侵攻を非難する国連総会の決議では賛成にまわったものの、ロシアに対する西側諸国の制裁に加わることを一貫して拒否している。