高級乗用車大手の独メルセデスベンツは20日、独カナダ系の資源スタートアップ企業ロック・テック・リチウムから、リチウムイオン電池の正極材材料である水酸化リチウムを調達することで合意したと発表した。環境と人権に配慮して製造された電池原料を安定的に確保する狙い。契約の期間と規模は明らかにされていない。メルセデスは8月、ロック・テックから水酸化リチウムを調達する覚書に調印していた。
2026年から年平均1万トンの供給を受ける。これは電気自動車(BEV)15万台分に相当する量。ロック・テックから調達する水酸化リチウムを取引先の電池セルメーカーに供給することで、セルを安定確保できるようにする。
ロック・テックはメルセデス向けの水酸化リチウムを独東部のグーベンに建設する工場から供給する。同工場は24年に操業を開始する予定。年産能力は2万4,000トンであることから、メルセデスは主要な供給先となる。
メルセデスに供給する水酸化リチウムの原料は「責任ある鉱業保証のためのイニシアチブ(IRMA)」の認証を受けた鉱山から調達する。メルセデスはこれにより、人権侵害や環境破壊などリスク含みの原材料を自社製品から排除できる。
両社は今回、炭素中立の水酸化リチウム生産に向けて協力することも取り決めた。30年までに実現する計画。ロック・テックは同年までに原料の半分を廃電池のリサイクルで確保することを目指している。