イタリアで22日、9月の総選挙で第1党になった極右「イタリアの同胞(FDI)」のジョルジャ・メロニー党首が宣誓式を経て首相に就任した。女性の首相は同国初。政党連合を組む右派「同盟」と中道右派「フォルツァ・イタリア」との連立政権が発足した。
メローニ氏は2012年にFDIを結成し、14年に党首に就いた。独裁者ムソリーニが率いたファシスト党の流れをくむため極右に分類されており、メローニ氏は過去に反EU的な言動が目立った。ただ、最近は過激な発言が影を潜め、自国優先を掲げる一方で国際協調を重視する姿勢を示し、選挙戦では物価高対策を中心に現実的な路線を打ち出して支持を拡大した。FDIを軸とする右派連合は下院(定数400)で237議席、上院(定数200)で116議席を獲得し、それぞれ過半数を占める。
メローニ氏は21日、マッタレッラ大統領から辞任するドラギ首相の後任として新首相候補に指名されていた。新内閣は閣僚24人で構成され、内訳はFDIが9人、同盟とフォルツァ・イタリアがそれぞれ5人、元官僚が5人。外相にはフォルツァ・イタリア副党首のタヤーニ元欧州議会議長を起用し、経済財務相にはドラギ前政権で経済開発相を務めた同盟所属のジョルジェッティ氏を充てた。同盟のサルビーニ党首は副首相兼インフラ担当相に就く一方、フォルツァ・イタリアを率いるベルルスコーニ元首相は入閣しなかった。
新政権は喫緊の課題である価格高騰対策に取り組むことになるが、メローニ氏は大型減税やエネルギー価格高騰の影響を緩和するための支援策を打ち出しており、財政悪化を懸念する声も上がっている。一方、ロシアによるウクライナ侵攻への対応では、引き続きEUや北大西洋条約機構(NATO)と緊密に連携していく方針を強調している。ただ、ベルルスコーニ氏はプーチン大統領との関係が深く、サルビーニ氏も西側諸国による対ロ制裁に懐疑的で、メローニ氏が方針転換を迫られる可能性もある。
イタリアでは欧州中央銀行(ECB)前総裁のドラギ氏が率いる連立政権が、記録的な物価上昇への対応をめぐる対立で崩壊。7月に上下両院が解散され、2023年春に予定されていた総選挙が9月25日に前倒しで実施された。