IoT大手の独ボッシュは9日、同社主催のイベント「ボッシュ・コネクテッド・ワールド」で、米IT大手IBMと量子コンピューティング分野で協業すると発表した。モーターや燃料電池など炭素中立のパワートレインに投入する材料のシミュレーションを実施。資源量が限られ地政学リスクがあるうえ、環境負荷も大きい希土類と貴金属を10年以内に別の材料へと置き替えていく。シュテファン・ハルトゥング社長は「量子技術は欧州の技術主権にとって決定的に重要だ。ここで大切なのは、それをもっぱら他の地域任せにするのではなく、産業での応用分野を速やかに切り開き、事業モデルを開発することだ」と述べた。
ボッシュはIBMとの協業に材料シミュレーション分野で長く培ってきたノウハウを持ち寄ったうえで、IBMの量子コンピューター20台以上を利用する。また、両社共同で量子アルゴリズムを開発する。これにより材料の特性を従来型コンピューターよりも大幅に早く把握できるようになる。モーターでは軽量・小型・高効率であるとともに、希土類に比べ環境に優しい磁石を開発する考えだ。
ボッシュはデジタル化とネットワーク化に2025年までに総額100億ユーロを投資する計画も明らかにした。そのうちの3分の2を持続可能性、モビリティ、インダストリー4.0を中心とする将来性の高い技術分野に振り向ける。DXに社員が対応できるようにするため、リスキリングにも資金を投じる。