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2022/11/23

総合 - ドイツ経済ニュース

インフレにピークアウトの前兆か、生産者物価が統計開始後最大の下げ幅に

この記事の要約

インフレ率の上昇が近く、ピークに達する可能性があるとの見方が出てきた。生産者物価が予想に反して大幅に下落したためだ。同物価の動向は最下流の消費者物価を先取りすることから、州立銀行LBBWのエコノミストはロイター通信に、「 […]

インフレ率の上昇が近く、ピークに達する可能性があるとの見方が出てきた。生産者物価が予想に反して大幅に下落したためだ。同物価の動向は最下流の消費者物価を先取りすることから、州立銀行LBBWのエコノミストはロイター通信に、「景気(低迷)に起因する価格圧力の若干の低下の最初の兆候かもしれない」と述べた。ただ、値上げを計画する企業が多いことから、実際にインフレ率が鈍化するかどうかは定かでない。

ドイツ連邦統計局が21日発表した10月の生産者物価指数は前月を4.2%下回り、統計を開始した1949年以降で最大の下げ幅を記録した。同物価の低下は2020年5月以来で2年5カ月ぶり。エネルギー価格が10.4%下がり、全体が強く押し下げられた。

電力と天然ガスの価格が前月比で大きく低下した。下落幅はそれぞれ16.9%、9.0%に上る。ともに大口需要家向けの価格が全体を押し下げた。石油製品は2.6%上昇している。エネルギーを除いた生産者物価の変動率はプラス0.4%だった。

前年同月比では生産者物価指数が34.5%増となり、これまでに引き続き大きく上昇した。ただ、上げ幅は過去最高となった8月・9月(ともに45.8%)に比べると10ポイント以上縮小している。

エネルギーの上昇率は85.6%となり、前月の同132.2%を大幅に下回った。天然ガスは125.6%(前月192.4%)で、産業向けは151.2(264.8%)、再販事業者向けは117.7%(199.9%)、発電所向けは110.2%(233.1%)だった。

電力は90.3%(158.3%)で、再販事業者向けは137.7%(259.8%)、特別契約顧客向けは80.1%(148.9%)となっている。

石油製品は34.6%となり、前月(42.9%)を下回った。灯油は76.2%(84.4%)、自動車燃料は30.8%(38.6%)。エネルギーを除いた物価上昇率は13.7%で、前月に比べ0.3ポイント低い。

中間財は15.9%増と大きく上昇したものの、上げ幅はこれまでに引き続き縮小した。ピーク時の4月は26.0%に上っていた。

中間財価格全体に最も強い影響をもたらしたのは金属で、15.7%(18.1%)を記録。銑鉄・鉄鋼・鉄合金は21.0%(19.8%)だった。金属以外では肥料・窒素化合物で113.1%(113.5%)、穀物粉で40.7%(44.3%)と高水準を記録した。肥料の原料となるアンモニアは182.3%(208.7%)に上った。

投資財の上昇率は前月と同じ7.8%だった。全体を最も強く押し上げたのは機械で9.5%(9.1%)を記録。押し上げ効果が二番目に大きかった自動車・自動車部品は5.6%(6.3%)に上った。上げ幅はタービンで20.0%、送風機で17.9%と特に大きかった。

耐久消費財は11.3%となり、前月を0.4ポイント上回った。押し上げ効果が大きい家具は13.4%(13.6%)に上った。

非耐久消費財の上げ幅は前月の18.3%から19.0%に拡大した。食料品は25.1%(24.2%)で、バターは66.3%(72.2%)、豚肉は47.0%(46.3%)、チーズ・クワァルクは38.3%(39.7%)、牛乳は36.1%(37.5%)、コーヒーは29.1%(32.0%)だった。

企業は今後も値上げ

ドイツの消費者物価は9月に前年同月比で10.0%上昇し、東西ドイツ統一後最高のインフレ率を記録した。10月には10.4%へと拡大している。エネルギー価格の高騰とそれに伴う幅広い分野での値上げに加え、サプライチェーンのひっ迫に伴う供給不足が響いた格好だ。エコノミストの間ではインフレ率が今後数カ月は2ケタ台にとどまるとの見方が有力だ。

ただ、ここにきて川上の生産者物価レベルでエネルギー価格が前月を大きく下回ったうえ、中間財も前年同月比の上げ幅が縮小し続けていることから、消費者物価レベルでも物価高騰が沈静化していくとの見方が出ている。今後数カ月でインフレ率が10%弱まで低下すると予想するエコノミストもいる。

これに対しコメルツ銀行のチーフエコノミストは、電力と天然ガスの価格は今後、政策的に上限が設定されることから押し下げられるものの、エネルギー以外の商品分野では値上げ圧力が依然として高いことを指摘。インフレ率がピークアウトするかどうかは現時点では不透明だとの見方を示した。

Ifo経済研究所が同日発表した独企業アンケート調査結果によると、調達コストの上昇分のうちこれまでに販売価格へと転嫁できた割合は平均34%にとどまった。回答企業はこの割合を来年4月までに同50%へと引き上げる計画のため、インフレ率が大きく下がる可能性は当面、低いとみられる。