ポーランド、石炭利用への回帰強まる

●炭鉱全廃を目指す従来の石炭政策から大きく舵を切ることに

●原子力の導入が確定するまで石炭火力発電所は閉鎖しない方針

ポーランド政府が石炭の生産拡大や炭鉱への設備投資を検討している。同国の閣僚が相次いで石炭政策の変更を示唆しており、ウクライナ戦争開始後の石炭需要の増加を受けて新規の炭鉱開発も視野に入れている模様だ。欧州連合(EU)での合意を受けて炭鉱の全廃を決めていた政府はこれまでの石炭政策から大きく舵を切ることになる。

放送局『TVレプブリカ』とのインタビューに応じたアンナ・モスクワ気候変動対策相は、ロシアのウクライナ侵攻以前から石炭需要の増加が見られたとし、石炭増産の他、新規の炭鉱開発に乗り出すことも計画していると述べた。ヤツェク・サシン国家資産相は炭鉱を全廃する時期の見直しの他、炭鉱開発も推進すべきだとの考えを示している。同相によると、国内での採炭の推進は高価な輸入炭への依存を避けることが目的だ。政府は家庭用暖房向けに使用されていたロシア産石炭製品の輸入を禁止したため、新たな調達先を探す必要に迫られている。

同国の総発電量に占める石炭の割合はEUで最も高い70%に上り、家庭の暖房の3分の1が石炭で賄われている。政府は直近のエネルギー計画で、2040年までに総発電量に占める石炭の割合を28%以下に引き下げる他、49年までに炭鉱をすべて閉鎖する方針を明らかにしていた。

モスクワ気候変動対策相はまた、ポーランドが導入を検討している原子力発電について、3つの原子力発電所の建設計画の策定が現在最終段階に入っている述べた。政府は原子力の導入が確実になるまで石炭火力発電所は閉鎖しない方針だ。

ポーランド政府は先月、同国初の原発建設事業で米ウエスチングハウスを建設事業者に選定した。もう1つの原発については韓国企業に決定されており、3つ目の原発については未定となっている。

一方で政府は昨年、国営企業から石炭事業を買収し切り離すことでエネルギー企業の脱炭素化に向けた資金調達を容易にする措置をとってきた。政府は再生可能エネルギーの割合をエネルギー供給全体の17%まで拡大する方針を掲げる。

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