天然ガス調達価格の高騰で経営危機に陥り国有化される予定の独エネルギー大手ユニパーは23日、国の出資額が従来計画の80億ユーロから最大330億ユーロに膨らむ見通しを明らかにした。調達コストが膨張し資金繰りが急速に悪化しているガス輸入事業者への支援策を政府が変更したことから、ユニパーへの出資額が大幅に増える見通しとなった。
ドイツ政府は9月下旬、ユニパーを国有化する計画を発表した。天然ガス輸入最大手の同社が経営破たんすると国内のエネルギー安定供給が損なわれ市民生活と経済に甚大な影響が出ることから、国有化してそうした事態を回避する考え。ユニパー株主と欧州連合(EU)欧州委員会の承認を経て実施する。
9月時点の計画は、ユニパーが行う第3者割当増資を国は単独で引き受け80億ユーロを出資するほか、現在の親会社であるフィンランド同業のフォータムが持つ株式78%を約4億8,000万ユーロで取得するというものだった。取得価格はともに1株当たり1.70ユーロ。取引が完了すると国の出資比率は約99%に達する。
だが、ガス輸入事業者を支援するために輸入コストの上昇分を分担金の形で需要家が負担するというルールを、国が10月1日の導入直前に取り止めたことから、ユニパーの資金繰りは10月以降も厳しい状況に置かれている。
同社は調達コストの膨張で2022年1-9月期に403億700万ユーロの巨額純赤字を計上した。今年から24年までは赤字が続く見通しだ。
国はこれを踏まえ、出資額を最大250億ユーロ上乗せすることにした。国有化計画は欧州委の承認を経て、12月19日の臨時株主総会で承認される見通しだ。