鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップから大株主であるスウェーデンの投資会社セビアンが資本をほぼ全面的に引き上げた。セビアンが22日に明らかにしたもので、定期的なポートフォリオ見直しの一環でティッセン株を売却したとしている。セビアンはティッセンの経営を公然と批判し、2018年と19年には計3人の役員の辞任を引き起こしたで注目を浴びた。
セビアンは13年にティッセン株5.2%を取得し、株主となった。ティッセンは当時、米国とブラジルで行った巨額鉄鋼投資の失敗を受け、鉄鋼事業を縮小し産業事業を強化する方針を打ち出していた。このため、同社株を買い時と判断。その後、株式を18%まで買い増し第2位株主となった。
だが、ティッセンの業績は改善せず、株価は一段と低下したことから、セビアンはコスト削減と本社のスリム化を要求。これが受け入れられなかったことから、経営陣を公然と批判するようになった。18年7月にハインリッヒ・ヒージンガー社長(当時)とウルリヒ・レーナー監査役会長(同)が相次いで辞任したのは業務の遂行に必要な株主の信頼が失われたと判断したためだ。19年にはヒージンガー氏の後任であったギド・ケルクホッフ社長が事実上、解任された。ティッセンはその後、マルティーナ・メルツ現社長のもとで再建を進め、22年9月期に最終黒字転換を果たした。
セビアンは1年前、出資比率を8%へと引き下げた。今年9月時点では6.6%まで低下していた。株式の売却価格は取得価格を大幅に下回っており、同社は大きな損失を計上したとみられる。