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2022/12/7

総合 - ドイツ経済ニュース

電動車販売が来年失速か、補助金縮小などで「24年にはシェア半減」

この記事の要約

ドイツの電動車販売台数が来年から大幅に減少するとの見方が浮上している。電力価格が大幅に上昇しているうえ、これまで急速な成長を支えてきた購入補助金が来年から縮小されるためで、デュースブルク・エッセン大学自動車研究センター( […]

ドイツの電動車販売台数が来年から大幅に減少するとの見方が浮上している。電力価格が大幅に上昇しているうえ、これまで急速な成長を支えてきた購入補助金が来年から縮小されるためで、デュースブルク・エッセン大学自動車研究センター(CAR)は1日、乗用車新車登録台数に占める電動車の割合は今後2年で半減するとの予測を示した。

同国では電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)が電動車とされ、購入補助金交付の対象となっている。FCVは全国レベルの水素補給インフラが未整備のため、ほとんど普及しておらず、電動車の大半はBEVとPHVが占める。

電動車購入補助金は2016年に導入された。補助金額は当初、カタログ価格4万ユーロ以下のBEVとFCVで6,000ユーロ、同4万ユーロ超のEVとFCVで5,000ユーロ、4万ユーロ以下のPHVで4,500ユーロ、4万ユーロ超のPHVで3,750ユーロとなっていた。補助金は国と各メーカーが折半していた。

同補助金の国の負担部分はコロナ危機対策で20年に2倍へと引き上げられた。この結果、例えば4万ユーロ以下のBEV・FCVであれば購入者は9,000ユーロの補助金(国が6,000ユーロ、メーカーが3,000ユーロを負担)、4万ユーロ超のPHVでは同6,750ユーロ(国が4500ユーロ、メーカーが2,250ユーロを負担)を受けられるようになった。

この効果で需要は急加速。乗用車新車登録に占める電動車の割合は20年半ばに上昇基調が始まり、同7月(11.4%)に2ケタ台を記録。今年11月には駆け込み需要の効果もあり過去最高の39.4%(FCVを含まない)に達した。新車10台のうち4台が電動車となっている。(グラフ参照)

経済・気候省は7月、電動車向けの国の補助金を来年から縮小することを明らかにした。与党合意に基づく措置で、BEVとFCVで支給額を引き下げ、PHVでは補助金を廃止。BEVとFVCの助成額は現在の「7,500~9,000ユーロ」から「4,500~6,750ユーロ」に低下する。

また、受給資格は来年9月1日から個人に制限される。さらに、補助金総額に上限枠が設定されることから、来年末には助成が打ち切られるとCARは予想している。

CARはこうした事情を踏まえ、電動車の新車登録台数が今年の72万台(見通し)から23年に48万4,000台、24年には36万2,000台に減少すると予想している。乗用車全体に占める割合は今年が27.8%、23年が21.3%、24年が14%になるとしている。

シェアが再び拡大するのは早くても25年になると見込んでいる。同年以降に欧州のリチウムイオン電池セル生産能力が拡大し、規模の効果で電動車価格が低下するほか、電力料金も下がると予想しているためだ。

自動車市場は現在、歴史的な転換期にあり、世界2大市場の中国と米国では車両の電動化が加速する見通し。CARのフェルディナント・ドゥーデンフェファー所長は、そうした重要な時期にドイツの電動車市場が失速することは問題だとして、政府に助成縮小の見直しを提言した。

「電力価格上限ルールを電動車にも適用を」

助成縮小に対しては輸入車業界団体VDIKも危機感を持っている。ラインハルト・ツィルペル会長は2日の年次記者会見で、電動車の販売成長率が2ケタ~3ケタ台に達していたここ数年の勢いは今後、なくなるとの見方を示した。CARほど悲観的ではないものの、来年の販売台数は前年比7%増の約79万台となり、伸び率が鈍化すると予想している。20年は成長率が263%、21年は同73%に達していた。22年は9%と大幅に弱まるものの、23年はさらに減速する。

VDIKによると、23年はPHVが12%減の29万台となり、足を強く引っ張る見通しだ。BEVについては22%増の50万台を見込んでいる。

ツァイペル氏は、充電インフラが十分に整備されていない現在の状況下で電動車の普及を促進するためには化石燃料でも走行が可能なPHVが必要不可欠だと指摘。完全電動化への橋渡しの車両であるPHVへの助成を今年末で打ち切るのは誤りだと批判した。

また、電力価格が高騰していることを踏まえ、需要家の料金負担を1キロワット時当たり40セントに制限するルールを世帯・企業だけでなく、電動車にも拡大適用すれば、購入の促進につながるとして、政府に検討を要請した。

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