EUの環境技術の競争力強化へ、欧州委員長が新法案策定を表明

欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は17日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会で行った演説で、環境分野の技術革新を通じた産業振興のため、新たな法案の策定やEUによる資金調達の支援強化を進める方針を打ち出した。電気自動車(BEV)購入優遇策などを盛り込んだ米国のインフレ抑制法や、多額の補助金と緩い環境規制で企業誘致を強力に進める中国を念頭に、規制環境の整備などを通じて環境分野におけるEUの競争力強化を目指す。

フォンデアライエン氏は演説で、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標の達成に向け、EUをクリーンエネルギー分野における技術革新の中心に位置づけるための「グリーンディール産業計画」の概要を明らかにした。同氏は「目的はサプライチェーン全体にわたり、戦略的なプロジェクトに投資を集中させることだ。特に新しいクリーンテクノロジー関連の生産拠点を新設する際、迅速かつ簡潔に認可できるようにするなど規制環境を整備する」と説明。そのうえで「欧州の産業力を維持するには、域外国で提供されている支援や奨励策と競争する必要がある」と強調した。

グリーンディール産業計画では、規制環境の整備と並んでEUによる資金調達の支援強化が柱となる。域外国による補助金などによってクリーンエネルギー分野などの生産拠点がEU域外に移転する事態を防ぐため、欧州委はすでに短期的な施策として、EU国家補助規則を緩和し、加盟国が補助金を交付しやすくする方向で検討を進めている。ただ、経済規模の小さい加盟国からは、国家補助ルールを緩和してもドイツなど資金豊富なごく一部の加盟国を利するだけといった批判が出ている。このためフォンデアライエン氏は今回、EUとして新たに「欧州主権基金(European Sovereignty Fund)」を創設する構想を打ち出した。財源や基金の規模など詳細は明らかにしておらず、欧州委が具体的にどのような提案を行うか注目される。

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