●EUは改革を実現するまで総額354億ユーロの配分を見送り
●最大の焦点となった裁判官の懲戒制度について改革案を提示
ポーランドの司法制度改革法案が8日、下院で可決され、成立した。欧州連合(EU)が同国で「法の支配」が順守されていないとして、復興基金の配分を凍結していることに対応したものだ。ドゥダ大統領の承認を経て発効となる。
欧州委員会は2022年6月、コロナ禍で打撃を受けた経済の立て直しを支援する復興基金からポーランドに総額354億ユーロを配分することを承認した。ただ、同国で司法の独立性が確保されていないことを問題視し、改革を実現するまで配分を見送っている。
最大の焦点となっていたのは、裁判官の懲戒制度。政府の意向に反する判決を阻止するため、18年に裁判官の懲戒制度に関する法律を導入し、最高裁内部に懲戒機関を設置していた。
成立した法案では、懲戒の権限を最高裁から最高行政裁判所に移す。最高裁内部で司法改革に反発する勢力があることを念頭に置いた措置だ。同法案は上院で可決された修正案を踏襲しなかったため、成立にはドゥダ大統領の承認が必要となる。大統領が承認し、しかもEUが改革の内容を十分と認定しなければ、基金からの配分凍結は解除されない。
このほか、下院は再生可能エネルギー利用の推進に消極的というEUの批判に対応するため、風力発電施設の建設、投資に対する厳しい規制を緩和する法案も可決した。