独化学工業会(VCI)は9日、同国化学・製薬業界の生産高が今年は前年比で約5%減少するとの予測を発表した。エネルギー、原料価格がここ数カ月で大幅に低下するなど薄明かりが見えてきたものの、エネルギー価格は国際的に比較すると依然として高いうえ、需要も不足しており、景気回復には程遠い状況にある。ヴォルフガング・グローセエントルップ専務理事は「エネルギー危機はドイツが抱える産業立地問題を露呈させた」と指摘。エネルギー高や専門人材不足、デジタル化の遅れなどの問題を列挙したうえで、米国のインフレ抑制法(IRA)に対抗するためには、何よりもトランスフォーメーションを加速させるための規制緩和が必要だと強調した。
今年は出荷価格もやや低下する見通しのため、業界売上高は7%以上、落ち込むと予想している。
2022年の生産高は前年を6.6%下回った。製薬を除くと減少幅は11.9%に達する。エネルギー・原料価格の高騰で出荷価格が21.7%上昇したことから、売上高は16.6%増の2,650億ユーロと大幅に伸びた。国内売上高が18.6%増の1,040億ユーロ、国外が同15.4%増の1,610億ユーロとともに2ケタ台の伸びとなっている。
22年第4四半期の生産高は前期比で5.0%減少した。前年同期比では減少幅が14.0%に上る。工場稼働率は前期の79.3%から76.5%へと低下し、金融危機のさなかにあった09年以来の低い水準となった。出荷価格は0.3%低下。売上高は3.7%減の592億ユーロへと落ち込んだ。国内売上が1.9%、国外が同4.8%縮小した。
グローセエントルップ氏は政府の産業政策にも言及した。炭素中立実現に向けた企業の取り組みに補助金を支給するというロベルト・ハーベック経済・気候相が打ち出した方針に歓迎の意を示しながらも、脱炭素化コストを政府が補助金の形で負担する炭素差額決済(CCfD)は煩雑すぎると指摘。産業向け電力に補助金を交付し、固定価格とすることを要請した。固定価格が1キロワット時当たり5~10セントであれば、製造業は生き残れるとしている。これが実現しなければ工場は国外に移転し、国外からの直接投資もなくなると明言した。