欧州航空大手エールフランスKLMを中心とする複数の航空会社は3日、アムステルダムにあるスキポール空港の発着便数をめぐり、オランダ政府を提訴する方針を明らかにした。空港周辺の騒音や温室効果ガス排出を削減するため、政府が事前の協議もなく発着便数の大幅な削減を決めたのは不当と主張している。
訴訟に加わるのは米デルタ航空、英格安航空会社イージージェット、同業の独TUI航空など。スキポール空港の発着便の約6割を占めるエールフランスKLMグループが中心となって手続きを進める。
オランダ政府は2022年6月、スキポール空港を発着する航空便の上限を年間50万便から44万便に引き下げる計画を発表した。空港周辺の騒音問題や、排ガスが地域住民の健康や自然環境に及ぼす影響への懸念から、経済・社会・環境のバランスを模索した結果だと説明していた。
エールフランスKLMのオランダ部門であるKLMオランダ航空の広報担当は「脱炭素化に向けて航空会社はすでに数十億ユーロの投資を行っており、短期・長期の削減目標を達成するための取り組みを進めている」と強調。EUの規則では環境対策として加盟国が新たな施策を決める際、事前に利害関係者と協議するよう義務付けているにもかかわらず、オランダ政府はこうした機会を設けず、一方的に航空会社の経済的利益や旅行者の利便性を無視した削減計画を打ち出したと指摘している。
スキポール空港を運営するロイヤル・スキポール・グループは今回の動きについて、「訴訟に発展したことを遺憾に思う」とコメント。そのうえで、航空ネットワークの質を維持しながら環境負荷を減らす持続可能な空港運営が不可欠との立場を強調し、「中間ステップとして年間46万便への削減が必要」との見方を示した。オランダ政府はロイヤル・スキポール・グループの株式の約70%を保有している。
一方、オランダのインフラストラクチャー・水管理省は「KLMオランダ航空などがオランダ政府に対して略式手続きを開始したことは承知している」とコメント。発着便数の削減は地域住民の法的権利を保護するためのもので、24年11月までに年間44万回に制限する方針に変わりはないと表明した。