自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は13日、カナダ南東のオンタリオ州セントトーマスに車載電池工場を建設すると発表した。同社が欧州域外に設置する初の電池生産拠点となる。北米で生産するグループブランドの電気自動車(BEV)向けに供給する意向だ。
セントトーマス工場で2027年から生産を開始する。投資額や生産能力などは明らかにされていない。同社は詳細情報を近日中に公表するとしている。
VWがオンタリオ州にセル工場を設置することは予想されていた。選定に絡んだ活動を活発に行っていることが同州のロビー活動家登録簿で明らかになっていたためだ。同州南東部のキングストンで電池正極材分野の協業先であるベルギー金属大手のユミコアが電池材料工場の建設を計画していることもあり、他の地域に白羽の矢を立てることは考えにくい状況となっていた。
VWは米テネシー州チャタヌーガに完成車工場を持つ。今月上旬には米乗用車ブランド「スカウト」の工場を米サウスカロライナ州コロンビアの周辺に建設することを決定している。セントトーマスは米国国境に近く、両完成車工場とのアクセスは比較的良い。
カナダは電池の材料となる鉱物資源が豊富なうえ、人権と環境に配慮した採掘・加工が行われている。また、米国と自由貿易協定を締結していることから、カナダ製電池セルの搭載車は米インフレ抑制法(IRA)の助成対象になるという事情がある。このため、自動車メーカーにとって戦略的な重要性が高まっている。