英石油大手BPは3月28日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)と共同で、イスラエルの天然ガス生産会社ニューメッド・エナジーの株式50%を取得することを提案したと発表した。東地中海での天然ガス権益拡大が狙い。買収額は86億シェケル(約3,200億円)に上る。
BPとADNOCはニューメッドの株式45%を流通市場で取得し、さらに親会社であるイスラエルのエネルギー企業デレク・グループが持つ株式5%を取得する計画。1株当たりの買い取り価格は12.05シェケルで、直近の終値に72%を上乗せした。同社の企業価値を約40億ドルと評価した形だ。残る50%はデレクが保有し、ニューメッドはBP・ADNOC側とデレクが折半出資する非公開会社となる。
ニューメッドはイスラエル北部の地中海沖合で2010年に発見されたレビヤタンガス田の最大の権益を持つ。米シェブロンが運営する同ガス田の年間採掘量は120億立方メートル。イスラエルやエジプト、ヨルダンにガスを供給している。
東地中海は欧州諸国のロシア産天然ガス離れが進む中、天然ガス開発の新たなホットスポットとして注目されている。BPとADNOCは取引が成立すれば合弁会社を設立し、東地中海での天然ガス田開発を進める。BPはエジプト天然ガスの利権を持っており、同地域でのガス開発事業を強化する。
BPがADNOCと組んだ背景には、UAEとイスラエルの国交が20年に正常化したことがある。これを機に両国の経済交流が活発化し、22年にはUAEのムバダラ・ペトロリアムがイスラエルの資源開発大手デレク・ドリリングから同国沖天然ガス田「タマル」の権益22%を約10億ドルで取得することで合意していた。