ファクトリーオートメーション(FA)大手の独クーカがモジューラー建築向け事業に参入した。建築現場の人材不足や建築価格の上昇を背景にニーズが急速に拡大しているためだ。ゲラルト・ミース取締役への取材をもとに12日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
モジューラー建築は建築物の主要部分を工場でモジュール化したうえで現場に運搬して設置する建築方式。組み立てをすべて現場で行う従来の建築方式に比べ、工期を短縮し、建材・人件費を圧縮できるメリットがある。
クーカはFA分野のノウハウを投入することで、モジューラー建築の効率を大幅に引き上げる考えだ。ミース氏は、「建設業界は現在、100年前の自動車業界と同じ地点に立っている」と述べ、生産性向上の余地は極めて大きいとの認識を示した。
同社はモジューラー建築分野でこれまでに金額ベースで4億ユーロ以上の問い合わせを受けた。そのうち約3,000万ユーロが受注につながっている。現在は米国で複数のプロジェクトが進行中。英不動産大手トップハットはクーカの技術を用いた巨大工場を建設する。アラブ首長国連邦ではサッカー場35面分のメガファクトリーが設置される予定だ。
ある米国企業はウクライナの復興需要を見据えて東欧にモジューラー建築用の工場を建設することを検討している。クーカはこの企業から問い合わせを受けているという。
現時点ですべての工程を自動化することはできない。ミース氏は1工場当たり約400人の工員が必要だと述べた。
モジューラー建築用工場のオートメーション化にはスイスのABBやシンドラーなど他の企業も取り組んでいるものの、同氏は「わが社は住宅建設向けの全パッケージを一手に提供できる欧州で唯一の企業だ」と述べ、競争で優位な立場にあるとの認識を示した。ロボットと生産ラインをともに提供できることをクーカの強みとみている。