欧州議会が「暗号資産市場規則」案可決、包括規制で投資家保護強化

欧州議会は20日の本会議で、暗号資産(仮想通貨)に関する包括的な規制である「暗号資産市場規則(MiCA)」案と、暗号資産交換業者に利用者の資産の移動追跡を義務付ける「資金移動規則」案をそれぞれ賛成多数で可決した。ビットコインをはじめとする暗号資産に関する関心が高まる中、金融システムの安定性を維持し、投資家を保護するのが法案の目的。両法案とも22年12月に欧州議会と閣僚理事会の間で政治合意に達しており、閣僚理の正式な承認を経て施行される。

MiCAは欧州委員会が20年9月に発表した法案で、暗号資産関連のサービスを提供する事業者に対し、加盟国の規制当局から認可の取得を義務付けることなどを柱とする内容。暗号資産の発行事業者だけでなく、顧客の暗号資産を保管する事業者や暗号資産の取引プラットフォームなどを含む、暗号資産関連サービスのプロバイダー(CASP)に適用される。

規則案によると、事業者はEU域内に物理的な拠点を置く必要がある。事業の開始にあたり、加盟国の規制当局から認可を得なければならないが、「EUパスポート制度」に基づき、1カ国の認可でEU全域での事業が可能となる。

米ドルやユーロなどの法定通貨に裏付けされた「ステーブルコイン」に関しては、発行者を欧州銀行監督局(EBA)の監督下に置き、十分に流動性のある準備金を積み立てるよう義務付ける。ステーブルコインの保有者には、いつでも無料で資金の返還を請求できる権利を与え、消費者保護を徹底させる。

規則案にはこのほか、市場操作やマネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金調達、その他の犯罪行為を防止するための対策が盛り込まれた。資金洗浄対策として、ESMAは当局の認可を得ずに域内で活動する事業者向けの登録簿を立ち上げ、監視体制を強化する。

MiCAは閣僚理の承認を経てEU官報に掲載され、20日後に施行される。その後、欧州証券市場監督機構(ESMA)がMiCAの適用に関する詳細なガイダンスを作成する。

一方、資金移動規則案は暗号資産の不正取引を防止する目的で、欧州委が21年7月に提案していた。暗号資産交換業者などに対し、送金時に送金者や受取人の詳細情報を収集することを義務付ける内容で、事業者は顧客の氏名、住所、生年月日、口座番号、および受取人の氏名を記録する必要がある。

取引所などを通さず、ユーザーが自身で秘密鍵を管理して資産を保有する自己管理型デジタルウォレットも規制の対象となり、暗号資産サービスプロバイダーが管理するホストウォレットとのやり取りで取引額が1,000ユーロを超える場合、同規則が適用される。

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