再エネ指令改正案、仏などの反対で採決見送り

EU加盟国は17日開いた大使級会合で、再生可能エネルギー指令の改正案について協議したが、原子力由来の低炭素水素の扱いについてフランスなどが難色を示し、議長国スウェーデンの判断で採決を見送った。欧州議会と閣僚理事会は3月末に改正案の内容で政治合意に達しており、大使級会合で加盟国の承認が得られる見通しだったが、法制化プロセスの最終段階で議論の行方が不透明になってきた。

再エネ指令改正案は、EU域内のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率について、2030年時点の目標を従来の「少なくとも32%」から「少なくとも42.5%」に引き上げることが柱。50年の気候中立を実現するため、EU全体で再エネへの移行を加速させると同時に、ロシア産化石燃料からの脱却を図る狙いがある。

改正案は運輸や製造業など分野別の再エネ目標も設定している。製造業では再エネ利用を毎年1.6%拡大させるほか、30年までに製造業で使用する水素のうち42%を非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)で製造された「再生可能水素」とし、35年までにこの割合を60%に引き上げる目標が盛り込まれている。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、大使級会合ではフランス、ブルガリア、ハンガリー、チェコなど原発推進派の6カ国が再エネ指令改正案に反対、または態度を保留する意向を表明した。フランスなどは原発から供給される電力で製造された低炭素水素が再生可能水素としてカウントされず、製造業における再エネ目標に算入できない事態を懸念している。フランスの代表は「原子力由来の電気が再エネ由来の電気と差別なく共存できるようにしなければならない」と述べた。これに対し、原発に反対するオーストリア、ドイツ、スペインなどは、風力や太陽光などを利用した発電を推進する取り組みが阻害されかねないと反発している。

EUは2035年以降に電気自動車(EV)などゼロエミッション車以外の新車販売を事実上禁止する法案をめぐり、最終局面で自国に大手自動車メーカーを抱えるドイツの主張を受け入れ、合成燃料を使用する場合に限って35年以降も内燃機関(エンジン)車の新車販売を容認する内容に修正した経緯がある。今回もこの時と同様のプロセスをたどっており、ある外交官は独仏の思惑によって法案成立が危ぶまれる事態について、「EUの気候変動対策にマイナスの影響を与える恐れがある」と指摘している。

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