欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/5/29

EU情報

EUが個人投資家の保護強化、販売手数料を厳しく制限へ

この記事の要約

欧州委員会は24日、個人投資家保護の強化策を発表した。安全な投資環境の整備を進めることで金融商品への投資を促進するのが狙い。銀行などが自社の金融商品を証券、投資会社をはじめとするブローカー(仲介業者)を通じて販売する際に […]

欧州委員会は24日、個人投資家保護の強化策を発表した。安全な投資環境の整備を進めることで金融商品への投資を促進するのが狙い。銀行などが自社の金融商品を証券、投資会社をはじめとするブローカー(仲介業者)を通じて販売する際に、手数料を支払うことを厳しく制限するのが柱となっている。

欧州委が問題視しているのは、銀行、保険会社などがブローカーに支払う手数料。誘因報酬と称される。欧州委は同報酬のコストが個人投資家に転嫁されることや、ブローカーが高額の商品を売りつけるなど顧客との利益相反につながるとして、対策を検討していた。

欧州委案によると、ブローカーが個人投資家にアドバイスを行わない場合に誘因報酬を受け取ることを禁止する。適正なアドバイスを行うようにするため、基準も強化する。

欧州委は当初、誘因報酬を全面的に禁止する方針だった。これにドイツ、イタリア、フランスや業界が反発したことから、個人投資家がアドバイスを受けた場合の誘因報酬は認める。ただし、新ルールが施行されてから3年後に見直し、投資家保護の効果が薄いと判断すれば全面禁止を検討する。

新ルールはEUの金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」などを改定する形で導入される。EU加盟国と欧州議会の承認が必要となる。

EUの家庭では米国と比べて投資による資産運用が低調で、貯蓄が資産形成の柱となっている。欧州委によると、株式、債券などが家計資産に占める割合は2021年時点で17%程度と低水準だ。

欧州委はEU資本市場のさらなる活性化に向けて、個人の投資への信頼を高め、こうした状況を改善する必要があると判断。個人投資家が払う手数料が機関投資家より平均で約40%も高い(21年時点)ことなどから、誘因報酬にメスを入れる。