ソーラーウエハー開発・製造のスタートアップ企業である独ネックウェーフは5月31日、既存と新規の投資家から計3,000万ユーロの資金を確保したと発表した。独東部のビターフェルトに建設する同社初の商業生産施設の着工資金に充てる。下半期には新たな資金調達を行い、建設を先に進める意向だ。
ネックウェーフはフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(ISE)からのスピンオフとして2015年に設立された。ソーラーウエハーの生産で用いるエネルギーと二酸化炭素(CO2)排出量を従来品に比べともに70%削減する技術を持つ。エネルギーの使用量が少ないことから生産コストも30%低い。また、原料の多結晶シリコンを内製することから、同原料価格が高騰してもコストが膨らまないという強みを持つ。
太陽光発電の分野では多結晶シリコンからウエハー、セル、モジュールに至る全バリューチェーンで中国メーカーが圧倒的なシェアを持っている。欧米では地政学リスクなどを背景に中国依存の引き下げが喫緊の課題となっていることから、同社製品に対する潜在的なニーズは大きい。
ビターフェルト工場は2025年上半期の操業開始を予定している。生産能力は当初250メガワット(MW)。最終的には3ギガワット(GW)に引き上げることを目指している。ビターフェルトに隣接するタールハイムには潜在的な顧客である太陽光発電モジュール企業マイヤー・バーガーの工場がある。
独ハーベック経済相は再生可能エネルギー産業の強化に向け太陽光発電設備分野で補助金政策を積極的に展開する意向を示している。低コストの生産技術を持つネックウェーフが順調に成長すれば、中国との競争に敗れて衰退した同国のソーラー産業は復活する可能性がある。
ネックウェーフにはサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコや太陽電池製造の印リライアンス・ニュー・エナジーが出資している。ネックウェーフは今回、ソーラーウエハー工場を将来サウジアラビアに建設することでサウジアラムコと合意したことも明らかにした。独『ハンデルスブラット』紙によると、インドにもリライアンス・ニュー・エナジーと共同で工場を設置する方向という。