化学大手の独BASFは29日、ドイツ東部のシュヴァルツハイデにある拠点でリチウムイオン電池用正極材工場の開所式を行った。同拠点では廃電池リサイクル施設の建設も行われており、欧州の電池材料バリューチェーン構築とアジア依存低減に寄与すると期待されている。
BASFは2017年、欧州で正極材を生産する計画を打ち出した。電動車向けの需要を取り込むことが狙いだ。フィンランド南西部のハルヤヴァルタで前駆物質を製造。欧州初の正極材量産施設であるシュヴァルツハイデ工場でこれを加工し、正極材に仕上げる。
年産能力は電動車およそ40万台分に相当する。すでに数年分の生産能力に相当する製品の販売先が決まっているという。
リサイクル施設では廃電池を粉砕して得られる黒い粉末に湿式製錬処理を施し、正極材の主要材料であるリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンを高比率で取り出す。2024年の操業開始を予定している。
雇用規模は正極材工場が150人、リサイクル施設が30人。
ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相は開所式で、「BASFのこの取り組み(正極材の量産とリサイクル)はバリューチェーンに沿った我々(欧州)の主権性を高め、循環経済を促進し、それにより経済安全保障を強化する」と称賛した。同社は欧州での正極材投資を拡大していく意向だ。