エフィシェント・エナジー―経営破たん―

冷媒に水道水を用いた冷却器を手がけるスタートアップ企業エフィシェント・エナジーは5日、会社更生手続きの適用をミュンヘン区裁判所に申請したと発表した。戦略投資家との出資交渉が5月に決裂し事業資金の見通しが立たなくなったため。暫定管財人のマティアス・ホフマン氏は「エフィシェント・エナジーは技術的に多くのことを達成した。製品には気候保護のインパクトがあり、ESG(環境・社会。ガバナンス)に合致した投資の重要性がますます高まる時代の投資家にとって極めて魅力的だ」と述べ、今後数カ月以内に解決策を見出すことに自信を示した。

同社はミュンヘン近郊のフェルトキルヒェンに本社を置く2006年設立の企業。長年の開発を経て18年半ばに初めて製品を市場投入した。

冷蔵庫や冷房などはほぼ例外なくハイドロフルオロカーボン(HFC)を冷媒として使用している。HFCは温暖化効果が極めて高いことから厳格に管理されているものの、充填、運転、廃棄時に一部が漏れ出る。漏出はごく少量であるにもかかわらず温室効果への寄与度は極めて高い。

このため欧州連合(EU)は30年までに投入規制を大幅に強化することを決めた。企業は対応を迫られており、これがエフィシェント・エナジーにとって追い風となっている。

ロシアのウクライナ進攻でエネルギー価格が高騰していることも同社にとってはプラス材料だ。同社の製品は電力消費量が従来型製品に比べ最大80%も少ないためだ。

エフィシェント・エナジーの冷却器「eチラー」は液体が蒸発気化する際に周囲から熱を奪う現象を利用する「蒸気圧縮冷凍サイクル」技術を採用している点で従来型の製品と変わりがない。だが、これを常温で行う点は新しい。技術的な壁が高かったことから、開発に長い時間がかかった。200以上の特許を持っている。累計の販売台数は170台を超える。

これまでは部品も含めて内製してきた。生産量が少なくサプライヤーを確保できなかったためだ。現在は電機大手のシーメンスや英電気通信大手ブリティッシュ・テレコムなど有力顧客を獲得。工作機械大手トルンプとは技術パートナーシップを締結した。新規顧客の問い合わせも急増し、部品生産を外部に委託できる見通しが立ってきたことから、垂直統合を可能な限り水平統合の方向へと改めていくための新たな資金調達を行っていた。

従業員数は現在およそ100人。8月末までの最大3カ月間は連邦雇用庁(BA)が給与を代替支給することから、それまでに投資家ないし売却先を確保できるかどうかがポイントとなる。

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