欧州委員会は8日、仏メディア大手ビベンディが仏同業のラガルデールを買収する計画を承認したと発表した。競争法の観点からビベンディは傘下の出版大手エディティスなどの売却を表明しており、欧州委に確約した資産売却を実行することが承認の条件となる。
ビベンディは2021年9月にラガルデールの買収に乗り出し、22年6月までに出資比率を57.35%に引き上げて経営権を取得した。ビベンディの事業分野は書籍・雑誌出版、テレビ、映画、ビデオゲーム、広告など。一方、ラガルデールは書籍出版、新聞、ラジオ、旅行、ライブイベントなどの事業を展開している。
欧州委の調査では重複部門の出版事業が焦点となった。ラガルデール傘下のアシェットは仏出版最大手で、ビベンディ傘下のエディティスは同2位。両社はともに著者との契約から書籍の流通、マーケティングに至るバリューチェーン全体で市場支配的な地位にある。欧州委は買収計画を認めるとフランス語書籍の出版事業で著しく競争が阻害され、著者や規模の小さい出版社、書店の選択肢を狭めて、最終的には消費者にも悪影響が及ぶ恐れがあるとの懸念を示した。
ビベンディは欧州委の承認を得るため、エディティスとセレブ雑誌「ガラ」を売却する方針を表明した。当初はエディティスを分離し、上場させる計画だったが、欧州委が難色を示したため、一括売却に方針転換。4月にチェコの富豪ダニエル・クレティンスキー氏が率いるメディア・インベスト傘下のインターナショナル・メディア・インベストへの売却で合意した。クレティンスキー氏はフランスで、有力紙ルモンド、民放大手TF1などに出資している。
欧州委は最終的にビベンディの提案を受け入れ、条件付きでラガルデールの買収を承認した。資産売却が確実に実行されるよう、独立した管財人が取引を監視し、売却先については欧州委が別途、適切な取引相手か審査する。