国際エネルギー機関(IEA)は19日に発表したレポートで、欧州の電力需要が昨年は3,671テラワット時(TWh)となり、前年を3.7%下回ったことを明らかにした。世界の他の地域はすべて増加しており、欧州の低迷が目立つ。天然ガス、電力価格の高騰を受けてエネルギー集約型産業を中心に生産を抑制したことが反映されている。IAEは米国のインフレ抑制法(IRA)など欧州域外の産業誘致策も踏まえ、欧州は製造業の立地拠点として強い圧力を受けているとの認識を示した。
欧州の電力需要は今年も2.6%減少し、2年連続で縮小する見通しだ。主力の欧州連合(EU)は今年が3.7%、来年が3%の幅で落ち込むと見込まれている。EUの今年上半期の減少幅は前年同期比で6%に達した。
昨年はエネルギー価格の高騰を受けて暖房用電力の使用量も減ったものの、欧州で電力需要が減少した最大の原因はエネルギー集約型産業で減産や工場閉鎖の動きが広がったことにある。減少幅はアルミニウム産業で12%、粗鋼で10%、製紙で6%、化学で5%に達した。
来年は欧州需要が1.7%増加すると予想しているものの、IEAは製造業の需要回復については不確実性が高いとしている。欧州域外への製造業の流出とそれに対するEUなどの対策がカギを握りそうだ。