中国国有の非鉄金属メーカー、紫金鉱業集団が、セルビアの銅・金採掘事業に追加
投資する。35億〜38億米ドルを投じ、露天掘りのチュカルペキ(Cukaru Peki)鉱
山の採掘深度を2キロメートル弱まで広げる方針だ。
チュカルペキ鉱山では100年以上前から銅、金、銀が採掘されてきた。地表から460
メートル以上の深い層には、さらに220万トンの銅が眠っていると推測される。浅
い層の採掘が2034年ごろに完了する見通しのため、今から準備を始め、7〜10年後
に深層の掘り出しを始めたい意向だ。
紫金鉱業は2018年、セルビア唯一の精銅所RTBボルの民営化に伴いチュカルペキ鉱
山を取得した。銅精鉱を中国のほかカナダ、ブルガリア、スペイン、韓国へ供給し
ている。また、セルビア政府と合弁で銅カソード、金、銀、硫酸の生産事業にも携
わる。
銅は風力タービンや送電線、電動車などに用いられ、グリーンエコノミーへの移行
に必要な「重要鉱物」に数えられる。重要鉱物の供給では中国が世界一だが、欧米
諸国は炭素中立化に遅れが出ないよう自国・欧州域内で生産する可能性を探ってい
る。
セルビアは欧州連合(EU)加盟候補国で、国外投資家の助けを借りて鉱山業界の再
生を図っている。今年に入って、世界最大の鉱山事業者である豪BHPグループとも
銅鉱山開発に向けた契約を交わした。紫金鉱業の運営する2社は、金属需要拡大の
波に乗り、一昨年以来、セルビアの大手輸出企業の一角を占める。
紫金鉱業はRTBボル買収のほか、コンゴとチベットへの投資を通じて急激に事業を
拡大。豪リオ・ティント、英国のアングロ・アメリカン、アントファガスタなどと
並ぶ世界的な銅大手へと成長した。25年までに年間生産量が120万トンへ増加し、
17年実績の6倍に達すると見込んでいる。