キルギス文化省は8月30日、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」
の利用を規制するようデジタル開発省に要請した。「子供の健康と精神的発達に悪
影響を与えている」ことが理由。ユーザーの年齢制限がなく、有害なコンテンツを
無制限に閲覧できることを危惧している。同アプリを巡っては個人データの扱いへ
の懸念から欧米を中心に利用の禁止が相次いでいるが、親中路線を堅持するキルギ
スで中国の製品サービスを制限する動きが出るのは珍しい。
文化省は声明で、「ティックトックはユーザーをショート動画の仮想世界に引き込
む。若年層は視聴後に特定の動画を真似しようとするが、中には命を脅かすものも
ある」と指摘。未熟で「流動的な」精神を持つ子供にとり、このようなコンテンツ
は中毒を引き起こし、感情に悪い影響を及ぼす可能性があると警告した。
ティックトックを巡っては、ユーザーの個人データや機密情報が中国側に渡るリス
クを警戒し、各国で利用を規制する動きが広がっている。インドはいち早く2020年
6月、国の安全の根幹にかかわるとの理由から同アプリを全面的に禁止した。
一方、キルギスは中国との経済的な結びつきを深めており、同国を刺激しかねない
地政学的な議論が公に表明されることはまれだ。政府は現在、政治・社会的な安定
を維持するためとして独立系メディアの閉鎖など検閲を強めており、当局はティッ
クトックの規制もその一環と主張している。
キルギス政府は自国民の個人情報を中国側にさらすことについては問題視していな
いもようだ。19年には首都ビシュケクに中国の技術供与で監視カメラのネットワー
クが整備され、その多くに顔認識技術が搭載された。同システムを通じて収集した
データを両国がどのように共有するかについての説明はこれまでなされていない。