化学大手コベストロがアブダビ国営石油と協議へ

独化学大手コベストロは8日夕、同社の買収を目指していると目されるアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ国営石油会社(ADNOC)との協議を開始すると発表した。ADNOCから関心を示されていることをコベストロが明らかにするのは今回が初めて。市場では6月半ばから観測が出ていた。両社の合意が成立するかどうか、また成立するとすればどのような形式・条件になるかは定かでないとしている。コベストロは、炭素中立実現に向けた経営戦略の継続が保証されるかどうかを特に重視していることを明らかにした。

両社はこれまで非公式の折衝を行ってきた。メディア報道によると、ADNOCは当初、1株当たり55~57ユーロでの買収を打診したが、評価額が低すぎるとして拒否されたことから、60ユーロに引き上げたという。コベストロを116億ユーロと評価したことになる。市場では買収提示額が最終的に65~70ユーロへとさらに上昇するとの観測がある。

ADNOCは買収計画に対するコベストロ経営陣の同意を得るため、買収後も同社の独立性を保証することや、GX(グリーントランスフォーメーション)などの分野への投資で巨額支援を行う意向を示しているという。

コベストロはポリカーボネート、および前駆物質であるTDIとMDIの世界的な有力メーカー。近年は脱炭素化に向けて積極的に取り組んでいる。ADNOCは石油事業への依存を引き下げ、脱炭素関連の事業を強化する方針を打ち出しており、コベストロの買収は経営戦略に合致している。脱炭素関連事業への投資予定額は1,500億ドルと巨大だ。

コベストロのマルクス・シュタイレマン社長は、「わが社に対するADNOCの関心は世界の主要な高付加価値樹脂メーカーであるとともに、循環経済の実現に取り組む先駆者であるわれわれの強い立場を示すものだ」と自社の将来性に自信を示した。

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