ドイツ北部で発電した再生可能エネルギー電力を南部などの需要地域に送る高圧直流送電(HVDC)線「ジュドリンク」の送電線敷設工事がエルベ川河口地域で11日、始まった。同国西南部のラインガルテンで7月に開始された交直交換所(電力を交流から直流ないし直流から交流に変換する施設)の建設に続く取り組み。停滞しているジュドリンク敷設プロジェクトがようやく目に見える形で具体化し始めてきた。
ドイツ政府は2011年の福島原発事故を受け、原子力発電の全廃を前倒しするとともに、再生可能エネルギーの拡充を加速する方針を打ち出した。これに伴い風力の強い北部地域で発電した再生エネ電力を需要地の南部と西部に送るHVDC線を大幅に拡充する必要がある。
ジュドリンクは総延長が700キロ、輸送容量が4ギガワットで、最も重要HVDCプロジェクトと位置付けられているが、住民の反対運動や認可手続きの長期化を受けて大幅に遅延。送電線の地上敷設を地中敷設に改めるなど変更を余儀なくされたことから、運営開始は当初予定の22年から28年にずれ込む見通しだ。
今回の敷設工事はエルベ川右岸のヴェヴェルスフレートで始まった。対岸のヴィッシュハーフェンとの間に地下トンネルを通る形で5.2キロの送電線を敷設する。8月中旬に建設許可が下りたことから着工に漕ぎ着けた。鍬入れ式に出席したロベルト・ハーベック経済・気候相は、「ジュドリンクによりドイツと周辺国の(電力)供給の安定性を高める」と述べ、プロジェクトの意義を強調した。
政府は国内の消費電力に占める再生エネの割合を30年までに現在の約50%から80%以上に高めることを目指している。このためジュドリンクを現在の予定通り28年に完成させることは極めて重要だ。