独西部州のヘッセンとバイエルンで8日、州議会選挙がそれぞれ実施された。国政与党の社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)は両州ですべて得票率が低下。内輪もめが多く危機に対処できないショルツ政権は有権者からお灸をすえられた格好だ。極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」は躍進しており、不満や不安が国内に広がっていることがうかがわれる。
ヘッセン州ではSPDの得票率が2018年の前回選挙を4.7ポイント下回る15.1%に低下。緑の党は5.0ポイント減の14.8%へと落ち込んだ。FDPは2.5ポイント減の5.0%で、議席獲得に必要な5%ラインをかろうじて保った格好だ。
AfDは5.3ポイント増の18.4%となり、SPDと緑の党を抜いて第2党に躍進した。得票率は西部州で同党が獲得したものとしては過去最高だ。
ヘッセン州の最大与党であるキリスト教民主同盟(CDU)は7.6ポイント増の34.6%と、伸び率が最も大きかった。同党のボリス・ライン州首相が有権者の高い支持を受けていることが背景にある。急進左派の左翼党は3.2ポイント減の3.1%となり、議席を喪失した。党勢の減退に歯止めがかからない。
バイエルン州では緑の党が3.2ポイント減の14.4%、SPDが1.3ポイント減の8.4%、FDPが2.1ポイント減の3.2%だった。FDPは議席を喪失。SPDは同州議選の最低記録をこれまでに引き続き更新した。
AfDは4.4ポイント増の14.6%に拡大した。移民の抑制を強く求める保守系地方政党の与党「バイエルンの自由な有権者(FW)」も4.2ポイント増の15.8%と得票率が大きく伸びている。FWがなければAfDの票はさらに増えていたとみられる。同州の最大与党であるキリスト教社会同盟(CSU)は0.2ポイント減の37.0%とほぼ横ばいを保った。
世論調査機関インフラテスト・ディマップが公共放送ARD向けに実施した出口調査では、ショルツ政権に不満を持つ有権者がバイエルンで77%、ヘッセンで69%と極めて多かった。ドイツの現状に不安を感じる人もそれぞれ78%、74%に達している。
ロシアのウクライナ進攻に伴うエネルギー危機と高インフレ、エネルギー集約型産業の存立基盤の揺らぎといった問題に政府が適切に対応できていないことが背景にある。実質所得が目減りするなかで進める住宅暖房規制の強化など脱炭素化に向けた政策は市民の先行き不安を強めている。政策を巡り与党の内紛が続いており、「政府は方向性を明確に示すべきだ」との回答は8割に達した。
こうした状況を受け、経済とエネルギー問題が選挙の最大のテーマとなった。難民の流入が数年ぶりに急増し、大きな社会問題になっていることから、移民・難民問題を重視する有権者も多かった。
■ 連立解消も視野に
これらの問題は2015~16年の難民危機と同様にAfDの強力な追い風となった。難民の流入数は減らすために政策を変更すべきと考える人はバイエルンで83%、ヘッセンで72%に上った。AfDの投票者ではそれぞれ95%、93%に達している。
「外国人が多すぎる」もバイエルンで61%、ヘッセンで53%と過半数に上った。来年9月にはAfDの支持率が30%を超える東部州のブランデンブルク、ザクセン、テューリンゲンで州議会選挙が予定されている。難民・経済問題が改善しなければ同党が第1党となる可能性は極めて高い。排外主義の高まりは外資の直接投資に悪影響をもたらすという事情もあることから、シュルツ政権は有効な対策を早急に実施する必要がある。
だが、今回の選挙結果を受け、与党間の不協和音は強まる懸念がある。各党とも有権者への独自色のアピールを強化する結果、政策調整がこれまで以上に難しくなると予想されるためだ。特にFDPは政権発足後、すべての州議選で得票率を落とし、州によっては全議席を喪失しているため危機感が大きい。ヴォルフガング・クビキ副党首は日刊紙『ビルト』に、「原発問題、暖房法、あるいは難民政策でわれわれ(政府・与党)は一貫して多数派の意見に反することを行ってきた。あるいは行っている。われわれが解決策を提示できないのであれば、最終的にはテーマが(新たな)連立を模索することになる」と述べ、現連立を解消し、有効な政策を提示できる政党が新政権を樹立すべきだとの認識を示唆した。