ドイツ人が現在、最も懸念していることは昨年同様、物価高騰に伴う生活費の増加であることが、保険大手R+Vの市民アンケート調査で分かった。心配事の上位は例年、生計に直接・間接的にかかわる事柄が占めている。調査をサポートしたマールブルク大学のイザベレ・ボルッキー教授は「人々は生存基盤が脅かされ、生活水準を保てなくなる恐れがあると感じている。それが没落の不安をかきたてている」と指摘した。
R+Vはドイツ語を話す14歳以上を対象に1992年から毎年、インタビュー形式のアンケート調査を実施し、『ドイツ人の不安』というレポートをまとめている。今回は6月12日から8月20日にかけて実施した。
「生活費の増加」に不安を感じている人は65%に上った。前年を2ポイント下回ったものの、高インフレの持続を背景に高い水準が続いている。買い物のたびに貨幣価値の目減りを実感していることが大きい。
心配事の2位は「住居費が負担限度を超える」で60%だった。前年を2ポイント上回っている。金利と建設コストの上昇でマイホームの夢が遠のいていることや、月々の家賃負担が増えていることが反映されている。
3位は「増税ないし公的給付の削減が行われる」で57%(前年52%)に上った。前年の4位からワンランク上昇している。コロナ禍とエネルギー危機対策で膨らんだ財政の正常化に政府が乗り出したことから、不安を感じる人が増えた。
4位には「国の受け入れ能力を超えた難民の流入」が付けた。前年比11ポイント増の56%と伸び率が大きい。ボルッキー氏は「人々は(難民を)社会に統合できるのかと不安を感じている」と指摘したうえで、移民を脅威ではなくチャンスとして実感できるよう解決策を打ち出すことは政治の課題だと明言した。