奇瑞汽車が欧州参入、独市場に来春SUVを投入

中国自動車大手の奇瑞汽車(チェリー)が欧州市場に参入する計画だ。欧州子会社チェリー・ヨーロッパのヨッヘン・テューティング社長が『ハンデルスブラット』紙に明らかにしたもので、「簡素な装備でとても魅力的な価格のボリュームセグメント」車を投入する。

欧州では独フォルクスワーゲン(VW)が「アップ」、メルセデスが「Aクラス」、アウディが「Q2」を廃止するなど、小型・コンパクトモデルを減らす動きがある。テューティング氏はこれを念頭に、「人々が必要としているのは手の届く車だ」と述べ、手ごろな価格の大衆車を投入する意向を示した。

まずは来年4月、SUV「Omoda 5」をドイツで発売。その後2年間でさらに「Omoda」「Jaecoo」ブランドのスポーツオフロード車5モデルを追加投入する。

価格はOmoda 5で3万ユーロ弱に設定する。3万ユーロを大幅に下回るモデルも計画している。

販売はディーラーの実店舗を通して行う。純粋なインターネット販売は考えていない。ただ、現時点で販売パートナーを確保していない。

欧州市場には近年、比亜迪汽車(BYD)、蔚来汽車(NIO)などの中国勢が相次いで参入している。これらのメーカーはもっぱら電気自動車(BEV)を投入しているが、奇瑞は純粋な内燃機関車とプラグインハイブリッド車(PHV)も販売する意向だ。BEVに絞り込むことは市場の80%を無視するに等しいとしている。

同社は輸出拡大に注力している。足元の中国市場では価格競争が泥沼化しているためだ。今年上半期の輸出台数は42万台となり、初めて国内販売を上回った。通年では昨年の2倍の90万台強に拡大する見通し。

独フランクフルト近郊のラウンハイムには設計・研究センターを開設した。欧州人の好みを踏まえてモデルに修正を加える。従業員は現在40人。年末までに開発要員を新たに最大30人、採用する。

テューティング氏は、欧州連合(EU)が中国製BEVに反補助金関税を課す方向で動いていることに関しては、奇瑞の中国国外の工場がすでに10カ所あることを指摘し、問題ないとの認識を示した。

欧州工場の建設も検討している。販売台数が年5万台に達すれば、現地での最終組み立ての採算が合うためだ。欧州に組立工場を設置した場合、主要部品は中国から輸入することになるものの、EUの関税率は3~4.5%で完成車より低いという。

独CAR自動車研究センターのフェルディナント・ドゥーデンフェファー所長は奇瑞の欧州進出について、成功を収めるのは極めて難しいとの見方を示した。BYDやNIOと違いこれといった特徴がないことを大きな弱みと指摘している。

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