バイエルが組織再編を検討、種子・農薬部門の分離も視野に

ライフサイエンス大手の独バイエルは8日の決算発表で、組織再編を検討していることを明らかにした。業績不振を受けて株主の間から事業分割を求める声が出ていることなどに対応。再編を通して技術革新力と経済性の高い組織へと改める。6月に就任したビル・アンダーソン社長は、「わが社のミッションにとって本質的な物事にのみ集中する」と述べた。来年3月の投資家説明会で計画を発表する。

同社は米種子・農薬大手モンサントを5年前に買収して以降、業績が悪化している。モンサントの農薬「グリホサート」の発がん性をめぐる巨額訴訟が大きな足かせとなっているためだ。株主の間には、バイエルの株価が1株当たり純資産の何倍の水準かを示す株価純資産倍率(PBR)の低迷を解消するために特許薬、一般医薬品、種子・農薬の3部門からなる同社を分割するよう求める声がある。

経営陣はこうした事情を踏まえて再編計画の作成に取り組んでいる。アンダーソン氏は、3部門をすべて手元にとどめることのほか、一般医薬品ないし種子・農薬のどちらかを分離するオプションを検討していることを明らかにした。3部門を同時分割することについては、「3社への分割は2段階の手続きが必要になる」として、その可能性を排除した。

管理職の階層を来年末までに削減し、各現場の決定権を強化することも計画している。これに伴い従業員数が大幅に減る可能性を排除していない。

2023年第3四半期の純損益は45億6,900万ユーロの赤字となり、前年同期の黒字(5億4,600万ユーロ)から大きく悪化した。種子・農薬部門で巨額評価損を計上したことが響いた。

売上高は8.3%減の103億4,200万ユーロに落ち込んだ。為替差損のほか、グリホサートの価格低下が反映されている。営業利益(EBITDA、特別項目を除く)は31.3%減の16億8,500万ユーロで、売上高営業利益率は前年同期の21.7%から16.3%に低下した。

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