製造業向け電力税の大幅引き下げで政府内合意

ドイツ政府は9日、ショルツ首相(社会民主党=SPD)とハーベック経済相(緑の党)、リントナー財務相(自由民主党=FDP)が製造業の電力料金負担を大幅に軽減することで合意したと発表した。もともと割高だった同国の電力料金が、長年強く依存してきたロシア産天然ガスの供給停止で高騰し、製造業の国外移転が進む懸念が急速に高まっていることから、産業立地競争力を保つために電力税を引き下げる。ショルツ氏は「負担軽減額は来年だけで最大120億ユーロ(約1兆9,200万円)に達する」と強調した。

2024年から5年間、電力税を引き下げる。24年と25年は減税を法制化。26~28年の3年間については財源を確保できる限度内で実施する。リントナー氏は基本法(憲法)の債務抑制ルール(シュルデンブレムゼ)に抵触しないようにすると明言した。

電力税は現在、1キロワット時(kWh)当たり1.537セントとなっている。これを欧州連合(EU)加盟国に認められた最低水準の0.05セントに引き下げる。

製造業の電力料金負担軽減はハーベック氏が特に強く要求してきた。同氏は「橋渡し電力価格」という名のエネルギー集約型産業向け低電力価格(産業電力価格)を30年まで時限導入する政策案を提言。電力取引所価格が1キロワット時(kWh)当たり6セント(年平均)を超えた場合、超過分を国が負担することを求めていた。雇用重視のSPDも類似の政策を打ち出していた。

一方、リントナー氏とショルツ首相は、産業電力は公的債務を膨張させる効果の薄い誤った政策だと批判。EUの補助金規制に抵触する懸念もあるとしていた。

経済界では化学や鉄鋼などエネルギー集約型産業がハーベック氏の提案を支持したのに対し、恩恵を受けられないそれ以外の業界からは批判が出ていた。

今回の合意はこれらの事情を踏まえて取り決められたもので、メーカーは業界や経営規模、電力消費量の多寡を問わず恩恵を受けることができる。EU法抵触の懸念も払しょくされた。独商工会議所連合会(DIHK)やドイツ機械工業連盟(VDMA)、独自動車工業会(VDA)など多くの業界団体は歓迎の意を表明している。

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