中国向けのハイテク製品で輸出審査が増加、長期化で企業業績に影響のケースも

ドイツから中国へのハイテク製品の輸出が当局の審査対象となるケースが増えている。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が当該企業や経済省への取材をもとに報じたもので、業績に影響が出ているケースもある。

半導体製造装置メーカー、ジュス・マイクロテックのブルクハルト・フリック社長は、税関が連邦経済輸出監督庁(BAFA)の判断を仰ぐケースが増えていると指摘したうえで、BAFAからの輸出許可書(Unbedenklichkeitsbescheinigung)の取得に要する時間が予想できないと問題点を上げた。総額2,350万ユーロの中国向け輸出で審査が長期化していることから、同社は2023年売上・利益予測の下方修正に追い込まれた。

工作機械大手のトルンプでもアルミニウムの加工や電池の生産で使われる標準的なレーザー機械が輸出できないでいる。受注額は8,500万ユーロに上る。

同様の問題に直面している光学機器大手のカール・ツァイスは、経済省と集中的・建設的に協議していると回答した。

ドイツでは純粋な民生品の貿易管理を税関、民生と軍事の両目的に使用できるデュアルユース製品の輸出管理をBAFAがそれぞれ担当している。このため税関はデュアルユースの疑いがある案件をBAFAに送り判断を仰がなければならない。

ただ、フリック氏によると、BAFAの審査対象となっているジュス・マイクロテックの装置はデュアルユース製品でないという。ドイツ機械工業連盟(VDMA)のカール・ホイスゲン会長は、中国向けの輸出審査でどのような基準が適用されているかなど、企業が対策を取るうえで必要な材料がないと指摘する。VDMAは8月末、経済省に協議を申し入れたが回答がないという。

同省はFAZ紙の問い合わせに、傘下官庁であるBAFAの審査手続きの迅速化に取り組んでいるとしたうえで、欧州連合(EU)の制裁があるため原則的に審査が必要となっていると回答した。

一方フリック氏は、現政権が7月に打ち出した「中国戦略」、ないし中国経由の対ロシア制裁迂回に対する警戒が背景にあると推測している。

上部へスクロール