高級車大手の独BMWがモロッコから調達するコバルトが環境・労働者保護規定に違反する形で採掘されている疑いが浮上している。独仏モロッコの3カ国のメディアが共同取材をもとに報じた。同社は違法行為が確認された場合、調達を打ち切る意向を示している。
違法行為の疑いが持たれているのはモロッコ王室が過半数株を持つ鉱山会社マナジェム(Managem)。報道によると、マナジェムがコバルトを採掘するボウ・アザー(Bou Azzer)鉱山では国際的な労働者保護基準が守られていないほか、有害物質であるヒ素が適切に処理されずに大量放出されている疑いが持たれている。批判的な労働組合を圧迫しているとの指摘もある。マナジェムは報道内容を否定している。
BMWは2020年、マナジェムと5年間の調達契約を締結した。成約額は1億ユーロ強。「第5世代」の電動パワートレインに用いるコバルトの20%を同社から購入する。残り80%はオーストラリアで調達することになっている。
BMWはメディアの取材に、マナジェムの環境汚染疑惑を8月に伝えられたことを受けて同社に問い合わせたところ、環境保護基準の順守証明書を提示された、と回答した。今回改めて疑惑が浮上したことから、さらなる情報の提供を要求したという。
BMWは17年、コバルトの採掘から電池セル製造に至る供給網を透明化し、環境破壊や健康被害、児童労働などの問題をサプライチェーンから一掃する方針を打ち出した。世界最大の産出国であるコンゴ民主共和国からの調達は児童労働リスクが高いことを受けて見合わせている。