独化学工業会(VCI)は15日、同国化学・製薬業界の生産高が今年は8.0%縮小する見通しを明らかにした。マルクス・シュタイレマン会長は「我々は深く長い谷のただ中にいる。あとどれだけ歩かなければならないのかはまだ分からない」と述べ、危機的な状況が長期化するとの見方を示した。
生産の落ち込みは化学分野で大きく、製薬を除いたベースでは減少幅が11.0%に上る。石油化学品と誘導体(15.0%減)、ポリマー(15.0%減)、無機化学品(10.0%減)、洗剤・ボディーケア用品・化粧品(10.0%減)は2ケタ減となり、ファイン・スペシャル化学品も4.0%落ち込む。製薬は3.0減と低下率が比較的小さい。工場稼働率は現在およそ77%で、採算ラインの82%を9四半期連続で下回っている。
今年の出荷価格については1.0%の低下を見込む。業界売上高は12.0%減の2,300億ユーロで、国内が16.0%減の860億ユーロ、国外が10.0%減の1,440億ユーロとなる見通しだ。
会員企業を対象としたアンケート調査では、「今年の利益が減少する」との回答が38%に上った。「赤字」も14%と多く、「増益」は13%にとどまった。
業界の景気が回復する時期については、「2025年以降」との予想が最も多く45%に達した。これに「24年下半期」が33%で続いており、大半の企業は業績好転の見通しが立たない状況だ。
これを踏まえVCIは来年の成長率が0%にとどまるとの予測を発表した。製薬を除いたベースではマイナス1.0%を見込む。出荷価格は3%低下。売上高と新規受注高はともに3%落ち込むと予想している。
ドイツはエネルギー価格の高騰などで産業立地条件が急速に悪化している。会員企業にどんな対策を取るか質問したところ、「効率改善」との回答が70%に達しダントツで多かった。これに「イノベーション:新しい技術・市場・製品」が48%、「GXの加速」が30%で続いた。「ドイツ国内投資の削減」(27%)、「国外への生産移管・国際化」(25%)、「事業の分離・特化」(17%)、「工場廃止」(9%)、「事業の断念・自社売却」(4%)など厳しい選択を迫られている企業も少なくない。
VCIは、ドイツ抱える構造問題はエネルギー危機だけでなく、インフラの老朽化、専門人材不足、過剰な規制、非効率で緩慢な行政手続きなど多岐に渡ると指摘。政策の迅速かつ抜本的な見直しを政府に要求した。