独鉄鋼業界で16日、新たな労使協定が取り決められた。GX(グリーントランスフォーメーション)に伴い労働力需要が将来的に減少した場合、標準労働時間を引き下げられるようにしたことが最大の目玉。雇用を維持できるようにする狙いがある。
金属労組IGメタルは、週労働時間を給与据え置きで現在の35時間から32時間に短縮する要求を掲げ労使交渉に臨んだ。従来型製鉄からグリーン製鉄への移行期間は労働力需要が増えるものの、その後は縮小するため、雇用を維持するためには労働時間の短縮が必要との認識に基づく。また、週労32時間体制が実現すれば、1週間の勤務日数を現在の5日から4日に短縮することが可能になり、ワークライフバランスを重視する若年層を新戦力として獲得しやすくなると強調。さらに、ストレスの減少や健康状態の改善により病欠が減り、生産性の向上につながると訴えた。
これに対し雇用者団体シュタールは、賃金据え置き要求に難色を提示。今回の合意では標準労働時間を削減する場合は賃金も一定程度、引き下げることが取り決められた。具体的には◇34時間となった場合は34.5時間分◇33時間となった場合は33.75時間分◇32時間となった場合は33時間分――の賃金が支給される。
グリーン製鉄への移行期に労働力需要が増えた場合は、最大3時間の残業を認めることも取り決められた。残業にはこれまで同様25%の割増賃金が適用される。
賃金については2025年1月1日付で5.5%引き上げることで合意が成立した。このほか非課税で社会保険料も賦課されないインフレ調整一時金が計3,000ユーロ支給される。一時金は24年1月に1,500ユーロを支給。その後は11月まで月150ユーロが支払われる。
今回の合意は北西部地区(ノルトライン・ヴェストファーレン、ニーダーザクセン、ブレーメン)で締結された。東部地区(ベルリン、ブランデンブルク、ザクセン)とザールラント地区(ヘッセンとバーデン・ヴュルテンベルク州にある計2工場を含む)でも同様の協定が結ばれる見通しだ。