化学大手の独ランクセスは23日、素材開発・製造の有力企業である独IBUテックとリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の正極材向け材料を共同開発すると発表した。LFP電池を採用する自動車メーカーが増えていることを踏まえた取り組み。LFPのバリューチェーンを欧州に構築することにも寄与するとしている。
LFP電池は正極材料にリン、鉄、リチウムを用いるリチウムイオン電池の一種。三元系正極材を用いる他のリチウムイオンに比べコストが最大50%低いうえ、発火しにくいという強みを持つことから、採用する自動車メーカーが急速に増えている。欧州ではLFP需要が2030年まで年率20%のスピードで増える見通しだ。
ただ、LFP電池にはエネルギー密度が低いという弱みがある。ランクセスとIBUテックはこれを踏まえ、高密度化につながる正極材用の酸化鉄を共同開発する。充電速度と充電サイクル面でも性能向上につなげたいとしている。
欧州ではこれまでLFPをほぼすべて輸入してきた。両社は欧州でバリューチェーンを構築することでこの現状を改め、レジリエンスを強化する意向だ。
ランクセスは酸化鉄の分野で長年のノウハウを持つ。十分な量のLFP電池向け酸化鉄粒子を適切なサイズ、純度、形態で供給できるとしている。IBUテックはLFP材料を製造する欧州唯一のメーカーであることから手を組むことにした。