貴金属大手の独ヘレウスは21日、小型分散型アンモニア製造プラントの商業化に取り
組むスタートアップ企業つばめBHBに資本参加したと発表した。つばめBHBへの外資の
出資は初めて。貴金属を利用したサステナブルな技術を持つつばめは補完性と将来性
が高いと判断した。今回の出資を機に日本事業を強化する意向だ。水素システム事業
部門長のフィリップ・ヴァルター氏は「(つばめBHBの)技術は、我々のすでに幅広
い持続可能なソリューションを補完するものであり、エネルギー効率と脱炭素にます
ます重点を置くようになっている市場において、ヘレウスのポジションを強化するも
のです」と意義を強調した。
つばめBHBは東京工業大学発のスタートアップとして2017年に設立された。同社はエ
レクトライド触媒という触媒を用いることで、従来の製法であるハーバー・ボッシュ
法(HB)に比べ低温・低圧・低コストでアンモニアを合成する技術の社会実装・商業
化を目指している。製造プラントが小型であることから、石油化学コンビナートで大
量生産されたものを調達する従来方式に比べ輸送や保管のプロセスが減り、二酸化炭
素(CO2)の排出削減につながるというメリットがある。これまでアンモニア市場で
満たされていなかった、需要家の間近でのアンモニア生産というニーズに応えること
ができる。
ヘレウスはつばめBHBが実施したシリーズCの資金調達ラウンドで横河電機などととも
に株式を引き受けた。同ラウンドの規模は53億円で、つばめBHBがこれまでに調達し
た累計の資金は76億円に上る。ヘレウスの出資額と出資比率は明らかにされていな
い。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙は百万ユーロのケタ台と報じた。
アンモニアは水素と窒素の合成で製造され、肥料、有機中間体、プラスチック、合成
繊維の原料として大きな役割を果たしている。今後数年で本格始動する水素経済でも
エネルギー・キャリアとして期待されており、将来性が高い。
つばめBHBはヘレウスの出資を受け今後、欧州を中心としたアンモニアの事業開発と
サプライチェーン強化を推進していく考えだ。脱炭素に野心的に取り組む欧州連合
(EU)で同社の技術へのニーズが高まると予想している。