ドイツがCCS解禁へ、炭素中立目標の実現に向け

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相(緑の党)は26日、「炭素管理戦略」の
基本方針案を発表した。これまで実質的に禁止してきた二酸化炭素(CO2)分離・貯
留(CCS)技術の利用を海洋に限って解禁することが柱。同戦略に基づいて二酸化炭
素貯留法(KSpG)を改正する意向だ。関連省庁間の調整手続きを経て炭素管理戦略案
とKSpG改正案を今後、閣議了承する。
KSpGは欧州連合(EU)指令を国内法に転換したもので、2012年に施行された。同法で
はCCSが認められているものの、長期の環境リスクに対する市民などの反対が予想さ
れることから厳しい制限が加えられている。
具体的には、貯留できるCO2の上限量が施設1カ所当たり年130万トン、国全体でも同
400万トンに制限されている。また、運営事業者の賠償責任期間が施設閉鎖後40年と
長いほか、CCS施設建設を州が決定する前に予定地の地理的特性や公共の利益などの
観点から慎重に吟味することが明記されている。さらに、各州は州内でのCCSを禁止
できるとの条項があり、メクレンブルク・フォーポマーン、ニーダーザクセン、シュ
レスヴィヒ・ホルシュタインの北部3州は同条項を発動している。
KSpGはCCSを実質的に禁止してきたと言える。だが、CCS抜きでは炭素中立実現のメド
が立たないことから、これまで強く反対してきた環境政党・緑の党も容認へと転換し
た。ハーベック氏は、セメントなど一部の産業ではCO2が不可避的に発生すること
や、近年の研究・試験運用などを通してCCSの安全性が確認されたことを指摘。CCSが
活用できなければドイツの産業立地競争力を保つこともできなくなるとして、解禁は
実際的で責任のある対応だと明言した。
CCSを認めるのは海洋のみで、陸地での本格的な貯留は引き続き禁止する。また、海
洋であっても保護区は解禁の対象としない。同氏は、炭素中立実現政策の柱はあくま
でもCO2の排出回避であり、CCSは補完的な位置付けに過ぎないことも強調した。

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