化学大手の独BASFは11日、フィンランドのリチウムイオン電池正極材料工場で一時帰
休(レイオフ)に向けた交渉を従業員代表と開始すると発表した。操業開始のめどが
立たなくなっていることを受けた措置。現在2ケタ台に上る従業員全員が対象となる
可能性がある。
同社は2018年、正極材の前駆物質工場をフィンランド南西部のハルヤヴァルタに建設
すると発表した。アジアと米国市場ではすでに正極材の供給体制を構築していたこと
から、欧州に新工場を開設することでグローバルな供給能力を高める狙いがあった。
ハルヤヴァルタ工場で製造した材料は独シュヴァルツハイデ工場で正極材に加工され
る計画となっている。
当初の計画ではハルヤヴァルタ工場の操業を22年に開始する予定だった。だが、環境
保護団体が差し止め訴訟を起こすなど逆風は強く、大幅な遅延を余儀なくされてい
る。2月21日にはヴァーサ行政裁判所が当局の環境許可決定を差し止めた。操業開始
の見通しが立たないなかで雇用を継続すればコストがいたずらに膨らむことから、同
社はレイオフを行う考えだ。
シュヴァルツハイデ工場への正極材料供給はBASFの供給網を活用して確保することか
ら、同工場での生産にしわ寄せは出ない。