ティッセンが鉄鋼子会社を合弁化、チェコのエネ大手が最大50%出資へ

独複合企業ティッセンクルップは26日、100%傘下の鉄鋼会社ティッセンクルッ
プ・スチール・ヨーロッパ(TKSE)をチェコのエネルギー大手EPコーポレート・グ
ループ(EPCG)との合弁会社に切り替えると発表した。欧州の厳しい市場環境下で
TKSEが持続的に利益を稼げるようにするとともに、事業の脱炭素化に必要な大量の
クリーンエネルギーを競争力の維持が可能なコストで安定確保できるようにする狙
い。ミゲル・ロペス社長は「それにはEPコーポレート・グループのような強力なエ
ネルギー・パートナーが必要不可欠だ」と強調した。
両社は今回、EPCGがTKSEに差し当たり20%出資することで合意した。出資額は非公
開。当局と監査役会の承認を経て取引が9月末までに完了すると見込んでいる。将
来的にはEPCGの出資比率を50%に引き上げTKSEを折半出資会社とする方向だ。
欧州の鉄鋼業界が置かれている状況は厳しい。景気低迷のほか、脱炭素規制の強
化、エネルギー価格の上昇、中国など域外からの安価な製品の長期流入といった構
造問題を抱えているためだ。ティッセンは2023年9月期にTKSEで評価損21億ユーロ
を計上した。
TKSEはコークスの代わりに水素を100%還元剤として用いることができる直接還元
鉄(DRI)製造施設をデュースブルク工場に設置して同拠点の脱炭素化を図る
「tkH2スチール」というプロジェクトを実施する。DRIの生産能力は年250万トン
で、同工場の二酸化炭素(CO2)排出量は年350万トン削減される見通し。26年に操
業を開始する。水素の投入量を段階的に増やしていき、29年には年14万3,000トン
を用いる計画だ。
EPCGは発電のほか、エネルギー取引事業も展開しており、TKSEは同社の出資を受け
ることで、脱炭素化に必要な再生可能エネルギー電力とグリーン水素を好条件で安
定確保できるようになる。ティッセンによると、水素製鉄では半製品スラブ(鋼
片)の製造コストに占めるエネルギーの割合が従来製法の約10%から最大50%へと
大幅に拡大することから、クリーンエネルギーを可能な限り低い価格で調達するこ
とは競争上、極めて重要になる。
EPCGの出資に対しては従業員と労組が強く反対している。ティッセンはこれを踏ま
えプレスリリースで、既存の労使合意をすべて維持するほか、経営上の理由による
整理解雇を行わない考えを表明した。

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