伊建材大手ブーツィ・ウニチェムの独子会社ディッカーホフは2日、チューリンゲ
ン州ドイナのセメント工場に二酸化炭素(CO2)の分離設備を建設すると発表し
た。セメントの製造工程で不可避的に発生するCO2を分離・貯留(CCS)すること
で、同工場の製品を温室効果ガスの排出量が正味ゼロとなる「ネットゼロ・セメン
ト」へと改める。ハイデルベルク・マテリアルズなどの競合も同様の取り組みを進
めており、CCS導入に向けたセメント業界の動きは加速しそうだ。
約3億5,000万ユーロを投じて分離設備を建設する。すでにフィージビリティスタ
ディを終了しており、現在は設備の詳細を計画している段階。2025年末の着工、29
年の稼働開始を予定している。投資額の一部を補助金で賄う考えで、すでに当局に
申請を行った。パトリック・クライン社長は経済紙『ハンデルスブラット』に、
「助成がなければ当初の数年間は採算が合わない」と述べた。
CO2の排出削減量は年およそ62万トンとなる見通し。これはチューリンゲン州の製
造業、商業、エネルギー転換で排出されるCO2総量の20%以上に当たる。
分離したCO2は液化したうえで、差し当たり鉄道で輸送する。CO2専用のパイプライ
ンが国内に敷設された段階で輸送方式を改める。
液化CO2はドイツ北部のヴィルヘルムスハーフェン港経由でノルウェー北海海域に
輸送。海底岩盤内に貯留する計画だ。海上輸送の手段は当初、船舶で、将来的にパ
イプラインに改められる。
ハイデルベルク・マテリアルズはノルウェー南部ブレビックのセメント工場でCCS
プロジェクトを進めている。同工場で排出されるCO2の50%に当たる年40万トンを
24年末から回収。液化したうえで枯渇した海底の油田・ガス田に貯留する。これに
よりネットゼロを実現したセメントを「エヴォゼロ(evoZero)」の商標で欧州市
場に投入する計画だ。同社は独西部のゲゼケ工場でも29年からネットゼロ・セメン
トを生産する。
ドイツではこのほか、スイス企業ホルシムがシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州
レーガードルフにある工場のゼロエミッション化に向けた改築工事を4月末に開始
した。