アブダビ国営石油が独コベストロ買収に大きく前進

化学大手の独コベストロは24日、同社の買収を目指しているとされるアラブ首長国連
邦(UAE)・アブダビ国営石油会社(ADNOC)との取引および投資契約締結に向け交渉
に入ると発表した。両社はこれまで、同交渉入りの前提となる原則的な問題の協議を
行ってきた。今後は具体的な問題について詰めの交渉を実施。合意に至れば取引に踏
み切る。
メディア報道によると、ADNOCは昨年6月、コベストロに1株当たり55〜57ユーロでの
買収を打診したが、評価額が低すぎるとして拒否されたことから、60ユーロに引き上
げた。コベストロはこれを受け9月、事前に結論を定めないオープンな協議をADNOCと
行う意向を表明。コベストロの成長戦略をADNOCが支持するなど原則的な問題でよう
やく合意が成立したことから、成約に向け具体的な条件交渉に入る。『フランクフル
ター・アルゲマイネ』紙によると、ADNOCはコベストロに対し、数年間の雇用の維持
と約80億ドルの投資を確約したという。
交渉がまとまれば、ADNOCは株式公開買い付け(TOB)を通してコベストロ株を取得す
る。現時点で1株当たり62ユーロを提示している。コベストロを約117億ユーロと評価
した格好。最終的な提示額は今後行う最終確認のための資産査定(コンファーマト
リー・デューデリジェンス=CDD)を踏まえて決定する。
コベストロはポリカーボネート、および前駆物質であるTDIとMDIの世界的な有力メー
カー。近年は脱炭素化に向けて積極的に取り組んでいる。ADNOCは石油事業への依存
を引き下げ、脱炭素関連の事業を強化する方針を打ち出しており、コベストロの買収
は経営戦略に合致している。脱炭素関連事業への投資予定額は1,500億ドルと巨大
だ。

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