自動車部品大手の独ZFフリードリヒスハーフェンは26日、組織再編方針を発表した。
低調な電気自動車(BEV)需要など厳しい市場環境を受け業績が圧迫されていること
から、抜本的なメスを入れる。ドイツ本国では拠点の統廃合を進め、従業員数を最大
26%削減する意向だ。再編の影響はBEV向けパワートレイン事業が特に強く受ける。
ホルガー・クライン社長は「状況は深刻であり、厳しさを増す市場・競争環境に適応
するためには決然とした行動が必要だ」と強調した。
同社は2015年にセンサー大手のTRW、20年にブレーキ大手のワブコを買収した。これ
により多くの事業拠点を取得したが、これら拠点の統廃合や連携の緊密化は行われて
おらず、ZFの組織は効率が悪い。
経営陣は競争環境の激化を受け、これまで手を付けてこなかったこの問題に取り組
む。ドイツ国内の拠点を複数のネットワークに統合。人事や会計などこれまで各拠点
が独立して行ってきた業務を各ネットワークで一元化する。収益力が低く将来性のな
い拠点は再編・閉鎖する。
これらの措置により、ドイツ国内の従業員5万4,000人のうち1万1,000人〜1万4,000人
を28年までに削減する。製造、管理、研究・開発分野が対象となる。整理解雇は可能
な限り回避する意向で、定年退職、希望退職、高齢労働者パートタイムなどを活用し
ていく。
BEV向けパワートレイン事業は従来の想定を下回るBEV市場の成長と、中国メーカーが
仕掛ける熾烈な価格競争を受けて、業績が振るわない。ZFは過剰な生産能力を抱え込
んでおり、抜本的な見直しが避けられない状況だ。『フランクフルター・アルゲマイ
ネ』紙によると、同社が欧州のある自動車メーカーから受注したBEV用インバーター
の製造原価が500〜600ユーロに達するのに対し、中国競合の同等製品では250ユーロ
にとどまるという。
経営陣はパワートレイン事業の再建に向け協業を視野に入れている。合弁会社化や新
規株式公開(IPO)も排除しないもようだ。
同社は過去の大型買収で有利子債務が膨らんでいることから、すでに乗用車向け車軸
事業を電子機器受託生産世界最大手の鴻海科技集団(フォックスコン)と合弁化し
た。エアバッグなどを手がけるパッシブセーフティ技術事業についてもIPOの準備を
進めていると目されている。
同社は今回、商用車向け技術、シャシー部品、風力タービンや建機などの産業機器向
け部品、アフターマーケットの4分野で事業を強化していく方針を表明した。